38章第4話 ハイメが山賊の首領となること


ベルンに来ると、ハイメはディートリッヒを迎えるためにやって来た。
このときディートリッヒは2本の剣を持っていたため、エッケザックスを自分の元においておき、アルベリッヒが巨人グリムのために作った剣、ナーゲリングをハイメに下賜した。
ハイメは王子の優しさに対し感謝を述べた。

しかし、ヴィテゲは同僚がこのような名誉を受けたことに対し不機嫌になった。

「おれは覚えているぞ」と、ハイメに語りかける。
「お前の剣は、おれが盗賊に襲われているとき、鞘の中に収まったままだったなぁ」
(※訳者注 意訳すると、「おれが山賊に襲われてるときブルってたお前にその剣はもったいないぜ」、という感じ。37章第4話参照)

「酷いことを言うんじゃないよ。お前は1人で充分だったじゃないか。
だから、おれはそのことを黙っていただけで、やましい所はない」
と、ハイメが言った。

2人の騎士は剣を抜き、決闘しようとだした。
ディートリッヒは2人の間に割り込むと、ハイメに対して、

「ここから出て行くがいい。
仲間が盗賊に襲われている時に手助けしないような者はここにいてはならない。
英雄にふさわしい行為ができたとき、再びベルンに戻ってくるがいい」

「あんたがおれにくれた剣で、誰であろうとも、勝利してみせるさ」
そう言って、ハイメは1人で出て行った。

それからハイメは盗賊と戦い、何人かを殺すと、自らが盗賊の首領になった。
多くの旅人がハイメの剣によって倒れ、彼は勇敢な騎士からも恐れられるようになった。
その後、ハイメは悪行によって得た財産の全てを失うまで、ディートリッヒの元に帰ることはなかった。

――王子は多くの巨人と戦ったけれども、ドワーフ王・ラウリンとの戦いほどの苦戦はなかっただろう。
ラウリンの強さはディートリッヒ部下の全ての騎士たちを超えており、また彼の騎士全てを捕虜にしたのだから。

2010/02/18

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