38章第3話 ディートリッヒが怪物などを退治し、また巨人の国を後にすること

旅の途中、巨大な象のような獣と遭遇することがあった。
ファゾルトは喜んでその獣を通したけれど、ディートリッヒは馬から降りてその獣にエッケザックスで斬りかかる。
獣にはたくさんの傷を与えたものの、ディートリッヒは獣を殺すには至らない勝った。
獣は彼を踏みつぶそうとして襲いかかるが、再び王子の愛馬・ファルケが救援に駆けつける。ファルケが獣を蹴りつけた隙にディートリッヒは体を自由にした。
それから、ディートリッヒは獣の胃の下にかがみこんで、鋭利なエッケの剣でいを刺し貫いた。そして、ディートリッヒは獣が倒れこんでくる前に、素早くその場を脱出した。

それからも、ディートリッヒとファゾルトは一緒に道を進んだ。
次に、彼らは大きな龍が自分たちの方に向かって飛んでくる様子を目にした。
龍はかなり低い場所を飛行しており、その口には1人の騎士をくわえ込んでいる。
龍にくわえられている騎士は、大声で助けを求めていた。

ディートリッヒは怪物に斬りかかったが、エッケザックスですら、怪物を切り裂くことはできなかった。

騎士は叫んだ。
「私の剣でなければ龍を殺すことはできません。
ですが、その剣は龍の口の中にあるのです」

彼は剣を引っ張り抜いた。

「龍を斬るとき、私の体は傷つけないでくださいよ」
と、騎士は叫んだ。

鋭い剣で斬りかかったディートリッヒは、こうして龍を殺し、囚われの騎士を自由にした。

「君の名前と、家柄は?」と、ベルンの王子が質問する。

「はい、私はシントラム(Sintram、発音は適当)です」と、騎士は答えた。
「私はベルンのヒルデブラントの親類にあたるものです。
いま、私はディートリッヒ王子にお仕えするため、ベルンを目指しているところです。
龍に捕まってしまいましたが、これは私が寝込みを襲われていたからです。でなければ、私は捕まりませんから」

ディートリッヒは喜びつつも素晴らしい剣を返却し、こう言った。

「私こそが、君の探し求めていた男だ。
つまり、ベルンの王子・ディートリッヒだ」

こうして、彼らは一緒に旅をすることになった。
だが、ジョックグリム山に近づくに連れ、ファゾルトは以前の誓いを忘れるようになり、逃亡の機会を伺うようになっていた。
しかし、ディートリッヒは王女たちが住む城にたどり着くまで、巨人に対して全く注意をしなかったのである。

ついに、彼らは巨大な城に到着した。
その城の扉には、2人の巨人の像が立っている。
ファゾルトはディートリッヒをその像の真中に導いた。
すると、ちょうどディートリッヒが像の中間地点に差し掛かったとき、巨人像が持っていた棍棒を振り下ろした。もし、ディートリッヒが素早く回避していなければ、王子は石の棍棒で殴り殺されていただろう。

激怒したディートリッヒは、直ちにファゾルトを攻撃し、この裏切り者を殺害した。

広間に入ると、そこには3人の王女と王妃、すなわち王女たちの母親がいた。
彼女たちは、エッケの鎧を着ていたディートリッヒのことを、エッケだと思い込んで歩み寄る。

「ベルンのディートリッヒを見ることが、おまえたちの望みだったな。
いま、ディートリッヒが挨拶をしてみせよう」
と、王子は言った。

そして、彼は王女たちの足元にエッケの首を投げつけ、それから背を向けてその場を後にした。
彼は急ぐことなく馬に乗ると、シントラムとともにベルンを目指したのである。
 

2010/02/18


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