39章第1話 ディートライプがハイメ盗賊団を壊滅させること

 

薔薇園の話をするまえに、キューンヒルトの兄である、デーン人ディートライプの話をしなければならない。
彼は自分の領地においては、優れた才覚と強さを持つことで有名であり、また彼の父親、ヤール・ビィテロルフ(Yarl Biterolf、発音は適当)もまた優れた功績を持つことで有名であった。

ディートライプとキューンヒルト、ヤールの3人がベルンを目指して旅をしていた時のこと、彼らは森の中でハイメと彼の盗賊団に遭遇した。
デーン人たちは勇敢に戦い、ハイメを除く盗賊の全てを殺した。さらに、ディートライプはヴォルスングの剣を振るい、ハイメの額に傷をつけたのである。

それから、若きデーン人は「イルメンリク」という偽名を使い、ディートリッヒの召使いになった。
あるとき、王子がエルマナリッヒの宮廷に招待された時のこと、デーン人の召使いが、ワスゲンシュタインのウォルターに侮辱されると言う事件が起きた。
ディートライプは腹を立て、尊大な騎士に対して挑戦した。
その挑戦の内容は、命を賭けて、優れた競技を見せつけると言うものであった。
宮廷にいたすべてのものは、この競技を目にしようと集まったので、騎士は誇らしげであった。
しかし、優れた成績を出したのはディートライプであった。

ディートライプは石を軽く叩くと、ハンマー投げの要領で投げ飛ばす。
ウォルターでは敵わない成績に、全てのものは驚嘆するのであった。

そこで、エルマナリッヒはかねてから自慢にしている騎士の命のため、賠償金を支払い、彼のために、主人が優れた戦士たちを招待したときのような素晴らしいご馳走を準備することを申し出た。

ディートリッヒも自分の召使いを誇りに思い、彼を騎士に叙任したのである。
このとき、既に宮廷に戻っていたハイメはこの宴会にも出席したおり、その席はディートライプの近くであった。
そこで、彼はハイメに対してこう話しかけた。

「ハイメよ、額に怪我をしているじゃないか。
その傷はどうやってできたんだい?」

ハイメは答えた。
「これは秘密の話だぜ、イルメンリク(ディートライプの偽名)よ。
この傷はデーン人のディートライプと戦ってやられた時のだ。
奴の血でおれの恥辱を洗い流すまで、ゆっくり休むこともできないぜ」

「一つ教えてあげよう」と、新しく叙任された騎士はささやいた。
「貴方と、貴方の率いる盗賊団を攻撃した男、それはこの私だ。
よく私の顔を見て欲しい…。私こそがディートライプだ。
貴方の馬があれほどの駿馬でなかったら、貴方は逃げることはできなかったはずだ。
ただ、私はディートリッヒ王子の前で貴方を糾弾する気はありません。
この件は、私たちだけの秘密、ということにしましょう」

2010/02/22


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