37章第3話 ハイメ、ディートリッヒの旗下に入ること

 

もはや、王国の中にはディートリッヒに匹敵する若き戦士はどこにもいない。
彼の名声は遠くまで届き、腕に覚えのある騎士はベルンを訪れ、ディートリッヒに挑戦し、できるなら彼に勝利して武勇のほどを示そうと考えるようになった。
その中から、ディートリッヒは身分の高い生まれの者、優れた能力を持つものを自分の取巻きに選んだ。
のち、ディートリッヒは勇敢なる騎士たちを多くを部下にすることになった。
その中には、ヴィテゲとハイメという名の騎士がいる。
彼らはともに慓悍で勇猛な性格であり、また暗くて残忍な心根であったため、非常に恐れられる存在でもあった。
男を叩きのめし、女を嘲り、多くの若き戦士が戦いによってヴィテゲとハイメに殺された。
また、ヴィテゲとハイメはともに卑しい生まれであったのだけれども、これから語るように、ディートリッヒによって名誉を与えられたのである。

まず、最初にベルンにやって来たのはハイメであった。
まるでドワーフのような外見をしていたけれど、ハイメは勇敢であり、また若いにもかかわらずかなりの実力を持っていた。
ベルンの王子の評判を知ってはいたけれど、ハイメはディートリッヒを恐れることはなかった。
ハイメの父親はシュトゥーダスという名であり、山の中で軍馬の育成を生業としているものだった。
そんなシュトゥーダスは、ディートリッヒに挑戦すると言い出した息子に、灰色の駿馬、リスペを、さらにブルトガングの剣を与えたのだった。

ハイメがベルンの宮廷にたどり着くと、さっそくディートリッヒに一騎打ちを申込んだ。
これを聞いたディートリッヒは激昂した。
すぐさまディートリッヒは鎧を身につけ、輝くヒルデグラムの兜をかぶる。さらに片手に槍を、もう片方の手には黄金の獅子を描いた盾を持ち、身分の低いよそ者に襲いかかった。
2人の激しい戦いのため、両者とも槍が折れてしまった。
さらに、ハイメの盾は貫かれた。一方、ディートリッヒの馬は倒れてしまい、彼は馬から投げ出されてしまう。

それでも、若き戦士たちはすぐさま起き上がり、折れた槍を捨ててきらめく剣を抜いた。
すさまじい戦いが始まった。ブルトガングはナーゲリングが激突すると、カチリと音がなる。
ハイメは勇気と技術を兼ね備えていたが、結局ブルトガングは粉砕されてしまったため、ディートリッヒに降伏した。
ディートリッヒもハイメの腕前を認めていたので、降伏を受け入れ、命をとることはしなかった。
勝利の名誉を得たディートリッヒは、気前よくよそ者に接すると、彼を自分の騎士団に加入させたのである。

2010/02/11

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