5章 1対3の戦い

それから、彼らは別々に分かれ、ウィリアムはアーサー王の宮廷を目指して出発したのである。
同日、ウィリアムは偶然にも誇らしげな3人の騎士に出会ったのである。この3人はいずれもウィリアムの姉の子、つまりは甥たちである。
この甥たちは怪我をしているウィリアムを見かけると、たいそう悲しんだ。

そして、甥の1人はこう尋ねた。
「叔父上、貴方に恥をかかせたうえ、大怪我をさせた奴はどこのどいつですか?」

ウィリアムは答えた。
「聖ヤコブにかけて、彼に非難すべき所はない。勇敢で、素晴らしい騎士だった。
彼は、ドワーフを従者に連れており、右側には美しい乙女を連れていた。
ただ、残念なことに、私は彼の剣にかけて誓いを立てさせられてしまったよ。
昼も夜も休むことなくアーサー王の宮廷を目指して進み、盾も槍も身に付けない状態で、アーサー王の前で彼の騎士に破れたこと、捕虜になったことを説明しなければならない。」

これを聞いた甥たちは言った。
「それならば復讐をしなければいけませんね。
その騎士は1人だけだけど、俺達は3人いるからきっと勝てるだろう。
叔父上は誓いを果たすため、旅を続けてください。
十字架にかけて、その騎士が森に入る前に攻撃を仕掛けてやろう。」

ep
さて、これまでアーサー王の宮廷に向うウィリアムのことをお話して来ましたが、ここからは美しく勇敢な若者が3人の騎士と戦うお話をいたしましょう。

3人の騎士は、すぐに鋼鉄の鎧を身に付けると若い騎士を殺すために馬に乗って出発した。
もちろん、リベアウスの方でこんなことを知るはずもないので、ゆっくりと旅を続けていた。乙女とゲームをしたりして楽しみながら進んでいたのである。
乙女は、かつてリベアウスに対し悪く言ったことを謝罪し、彼の方ではその無礼な振る舞いを許していたのである。
従者となっているドワーフは、必要に応じて2人のそばで、あるいは距離をおいて世話をした。

翌朝、あいかわらず彼らはシナドウンを助けるための旅を続けていた。
すると、彼らはカーロウンの森から、光り輝く鎧を身に付けた3人の騎士を発見した。

この騎士達はみなリベアウス・デスコヌスを殺すことを誓っている者であり、若者を見つけるとこう叫んだ。
「盗人め! 俺達と戦うのだ。
それが嫌なら、名誉をここにおいて立ち去るのだ。」

リベアウス・デスコヌスは答えた。
「いいですとも。ボクの方でも戦う準備はできている。」

そして、誇り高き若者は馬に拍車を入れると、3人に向って突撃して行った。
3人兄弟のうち、もっとも年長であるゴーワー卿は槍を構えると、リベアウスに向って突き出した。
しかし、リベアウスの力強い攻撃はゴーワーの足にあたり、これ以降、ゴーワーは足を引きずらなければならない程の怪我をした。

ドワーフのテオドデランは馬に手綱をつけ、鞍をおくとエレナのもとに向った。
だが、乙女は声を立てて笑って言った。
「私が選んだこの若い騎士は本当に大したものだわ!」

2番目の兄弟は、獅子のような心をもった馬に乗り、すばやく駆けつけ、リベアウスを馬から突き落そうとした。
そして、2番目の兄弟は鋭い剣でもって、リベアウスの頭を兜の上から打った。その力強い打撃のために兜は割れ、リベアウスの頭頂にまで刃が達した。
頭に鋭い刃が当たっている感覚に激怒したリベアウスは、触れたもの全てを切り裂かんばかりに剣を振り回した。

それから、騎士達が2人がかりでリベアウスに打ちかかってくると、リベアウスは
「1人に対して2人がかりとは卑怯じゃないか!」
と、叫んだ。
それでも、リベアウスは騎士達に激しい攻撃を繰り返した。
やがて、敵の騎士たちの方はリベアウスを相手に戦いつづけても勝てる力がないことを悟り、槍と盾を捨ててリベアウス卿に降伏し、慈悲を願った。

リベアウスは降伏を受け入れ、
「よし、お前達はボクから逃げてはいけない。
お前と、お前の兄弟2人は神にかけて誓うのだ。これから、アーサー王の宮廷に行き、『栄えある陛下、ある騎士が私を打ち負かし、虜囚にしました。これからは、永遠に貴方の街・あなたの塔で住まわせてください。』と言うのだ。
だが、断ると言うのなら、お前達は今晩を迎えることなく、ボクに殺されるんだからな。」
騎士達は、間違いなくアーサー王の下に行くことを誓った。

2009/8/13

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