4章 最初の決闘

 

出発から3日後、乙女は若い騎士を嘲って言った。

「お前がどれだけ勇気を誇ろうとも、しょせんは臆病者の卑怯者にすぎません。

いまからお前の誇りはボロボロになるでしょう。

この小道の向こうには、ある騎士の砦があります。その騎士はウィリアム・サレンブランシェという名前で、遥か遠くまで名声が届くほど。

そして、どんな騎士であってもここを通るには彼と勝負しなければならないの。

しかも、その強さは並外れたもので、彼の一撃を耐えられる騎士はこの世にいないでしょう。

どんな騎士だって、彼の槍を受けて心臓か足か、どっちかに穴が開くことになるわ。」

 

リベアウス・デスコヌスは言った。

「それほど激しい戦いなのかな?

それに、その男は、これまで攻撃を受けたことはないの?

たとえ何があろうとも、ボクはその男がどんな風に馬に乗るのか見てみなくちゃ。」

 

こうして、3人は冒険の城(原文・Castle Adventurous、適当に意訳しました)に到着した。さらに、危険の谷(原文・ Vale Perilous。冒険の谷でもいいけど、適当に意訳しました)を登ると、輝く鎧を身に付けた王を発見した。

その王は、黄金の獅子を描いた緑の盾を持ち、力強い一撃を繰り出せるような武装をしている。

 

男はリベリアス・デスコヌスたちに気づくと、こう話しかけてきた。

「ようこそ、美しい若者よ。

馬に乗ってやってきたからには、昼であろうが夜であろうが、君は私と戦わなければならない。

それが嫌ならば、武具を置いて行け。」

 

リベアウス・デスコヌスは、

「いやだね。神がボクを愛してくれるなら、ここだって安全に通過できるはずさ。

ボクと乙女、それから付き人のドワーフは、ずっと遠くの友達のところから、ずっと遠くまで馬に乗って行かなくちゃいけないから。」

 

ウィリアムは、

「ならば、お前を逃がすわけにはいかんな。

我らは2人で戦わなければならない。

1ファーロン(約200メートル)ほど西の場所まで着いて来い。」

 

リベアウスは、

「他の場所に行かなくても、この場所でいいじゃないか。

それが一番いいよ。

馬に乗って槍で突き合うんだ。あんたの槍さばきが上手なら、ボクもほとんど時間を掛けずに勝負を付けられるだろうからさ。」

 

これ以上、お互いに会話をすることもなく、2人の騎士は全速力でぶつかり合った。

この衝突で、リベアウス・デスコヌスの鋭い槍は、ウィリアム・サレブランシェのわき腹に一撃を与えた。

ウィリアムは高速で疾走する馬に乗っていたが、あぶみが壊れ、鞍が曲がったことにより、馬のお尻の方から地面に落馬してしまった。

主人が落馬したのだが、それでも馬だけは走り続けた。

 

一方、ウィリアムもすぐに起き上がると、こう叫んだ。

「神にかけて、今日までお前ほどに強い奴は始めてだ。

私の馬は走り去ってしまったが、お前に勇気があるのなら、徒歩で私と戦え!」

 

リベアウスは答えた。

「ようし、ボクの方こそ望むところだ!」

 

2人は剣を抜くと、弾かれたように突進し、剣を振り回した。

彼らの一撃はとても強かったため、兜の上では火花が飛び散ることになった。

やがて、ウィリアム・サレブランシェの打撃がリベアウス・デスコヌスの盾にあたったとき、盾を弾き飛ばすとともにリベアウスの心臓に強い怪我を与えた。

だが、高貴な騎士にして勇敢な戦士として、リベアウス・デスコヌスはウィリアムの兜を弾き飛ばし、剣の先端でウィリアムのあごひげと、肉を少しだけそり落として見せた。

ウィリアムも激しい攻撃をするものの、あまりの力強さのせいで剣が2つに折れてしまった。

 

「聖母マリアの慈愛にかけて、私を殺さないでくれ。

武器を持っていない騎士を殺すなんて、極悪非道なことではないか。」

 

リベアウス・デスコヌスは答えた。

「もはやお前の命はお前のものではない。

すぐに膝をついて、ボクの剣にかけて2つの誓いを立てて貰おうか。

まず、ボクの指示に従って、アーサー王のところに行くんだ。

そして、『素晴らしき陛下、ある騎士に打ち負かされ、虜囚としてやってきました。私を破った騎士はリベアウス・デスコヌスと呼ばれていましたが、その素性は知りません。』、と言うんだ。」

 

若い騎士の命令に従って、ウィリアムは膝をついて誓いを立てた。

それから、彼らは別々に分かれ、ウィリアムはアーサー王の宮廷を目指して出発したのである。

2009/8/11

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