7章 トリストラムのリオネス帰郷

 

こうしてトリストラムは赤い夢から覚め、叫び声をあげた。
それから森の奥にある小屋に戻った。
トリストラムは口笛を吹くと、草を食べていた馬を呼び寄せた。
葉っぱから日差しが照りつける中、トリストラムは馬に飛び乗って出発した。
やがて、トリストラムは十字路で泣き悲しんでいる乙女を見つけ、馬の足を止めさせた。

「どうして泣いているのです?」と、トリストラムは尋ねた。

「騎士さま」と乙女は言った。
「私の恋人が帰ってこないのです。私を捨てたのか、さもなくば死んでしまったのでしょう。」

―――この言葉を聴いて、トリストラムは考え込んだ。
(今、あの女性はおれを憎んでいるだろうか? 
だが、おれは彼女を嫌ってはいない。
あの女性はまだおれを愛しているだろうか。
だが、おれは彼女を愛してハイない。
おれは、いったいどうしたらいいのだろう…)

そんなことを考えながらも、トリストラムは乙女に対しこう答えた。

「泣くのはやめるんだ。
泣いてばかりいると、その恋人とやらが帰ってきたとき、君への愛が冷めてしまうかもしれないからね。」

―――それから、馬を進めたトリストラムは日が沈むころになってリオネスの国の渓谷にたどり着いた。
鐘を鳴らしたが、トリストラムが猟犬のように嫌っている忌々しいマーク王はその地を離れ、ティンタジェル(原文、Tintagil。どう発音してもティンタジルとかになるけれど、一般にはTintagelとつづってティンタジェルと発音するはずなんであえて原文無視)に向ったという情報を聞いた。
ティンタジェルは海に面した高原で、立派な塔が立っている地方である。

2009/10/14

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