13章 ガレス対ケイ
一方、乙女はまだトーナメント会場付近でとどまっており、こうつぶやいていた。
「陛下は私を馬鹿にしてこんなことをしたのかしら?
ランスロット卿が不在だとしても、騎士団から乙女の愛と名誉を与えるに相応しい騎士を派遣してくれればよかったのに。
あぁ、なんてことでしょう、まさか台所下働きをよこすなんて!」
そこに、ガレス卿が光り輝く武器を身に付けて現れた。じっさい、この世においてガレスより美しい者はほとんどいないだろう。
「乙女よ、この冒険は私にお任せください。
さぁ、ボクを導いてください、貴女に従いましょう!」
しかし、乙女はまるで腐った肉や森のキノコの匂い、あるいはトガリネズミやイタチなどの匂いを嗅ぎ取ると、親指を鳴らして叫んだ。
「あっち行ってよ、あんたからは台所の油の匂いがするわ。
それから、後ろを見て御覧なさいよ!」
果たして、ガレスの後方からは馬に乗ったケイ卿がやってきた。
「私が誰だか忘れたか? 私はケイ、お前のご主人様だ。
さっさと厨房に戻るんだ。」
ガレスは答えた。
「もうご主人様じゃないよ!
それに、ちゃんと貴方のことは知っている。
貴方はアーサー王の宮廷で最も冷酷な騎士だ!」
「お前は宮廷に戻れ!」とケイは言った。
馬に乗った2人は激突し、ケイは落馬して肩から地面に落ちた。
そうすると、再びガレスは叫んだ。
「さぁ、ボクを導いて下さい、貴女に従いましょう」
しかし、乙女はすばやく逃げ出してしまった。