15章 再会の兄弟
そうと知らずに闘う兄弟を見て、ヴィヴィアンは従者に喋り掛けた。
「馬鹿ねぇ。この男は自分の崇める王妃を汚しちゃたわよ。
決して他人には紋章を触らせることもなく、侮辱も許さなかったのに。
そして敵対するものに口を泡立てて抗議していたのにねえ。
おお、盾を壊されてたひよっこ騎士(Sir Chick 直訳すればひよこ、若造)はまだ体に黄身が付いてるほど子供みたいね。
きっと、カーレオンのウスク河での情事を見ていなかったんでしょう。
従者さんは私の愛を受けたことはないけども…。
見なさいよ。あのひよこ騎士ともう片方を、馬から下ろして兜を取らせるの。どうなるのか知りたいわ」
命じられた従者は兜を外すとこう言った。
「おお、見てください!
まるで刈り取られた5月の花のように、突付き合ってましたよ。
まるで、雌牛のために殺しあう愚かな雄牛みたいですよ」
そして、従者は穏やかに、
「私は彼らを幸せにしてやりましょう、愛のために死ぬことになるのですから。
ヴィヴィアンさん、私はまだ生きていますが、あいつらに撃たれれば犬みたいに死んでしまいますよ」
「死んでしまってはだめよ、坊や」とヴィヴィアン。「犬は生きてれば、死んだ獅子より価値があるんだから。死んだら許さないよ」
従者はヴィヴィアンの馬、倒れたオークの木を越え、義務に従って前進した。
「あんな騎士どもは、狼あたりにさせて欲しいなぁ」
cap
兜を外された兄弟の額が冷気を感じたとき、先にベイリンが起き上がると相手の素顔を見つめた。
相手はなんと、自分が揺り籠にいたころからの知り合いでないか。
はうように、ゆっくりと進むとうめき声をあげた。
そして、今にも死の淵にある弟に虚ろな目を向けた。
ベイランもうつろな目を開いた。ベイリンがそばにいることを知るた。
兄弟達は、ようやく世界を見つけたのだ。
子供のように泣き声をあげながら、上から見下ろす兄に口づけすると、うなるように喋り始めた。
「ああ兄さん、兄さん。僕は兄さんのもたらした死を、喜んで受け入れましょう。
でも、なんで僕の知っている盾を身に付けてなかったんです?
そして、どうして紋章の付いた盾を踏みつけていたんですか?」
あえぎながら、とぎれとぎれにベイリンが説明すると、偶然にかベイランが再びうめき声をあげた。