9章 ペラム王の宮廷
やがて、右に闇に包まれた洞穴を発見した。
その洞穴に光はまるで差し込まず、天井は尖った岩。地面も牙のように隆起しており、地獄の悪魔が住む夜の口と言ったところだ。
ベイリンは盲でもないから、この光景が見えなかったわけでない。
ベイリンは聾でもないから、木こりの話が聞こえなかったわけでもない。
だが、この洞穴に注意することもはなかった。
鎖でつながれた激情を胸に、中に入って行った。
太陽の沈むほうから、東を目指して。
すぐに、踏み固められたコケが広がる空き地に到着した。
そこでベイリンは槍のシャドウ(この場合、まま「影」とやるより「気配」が適当かな?)が後ろから地面に沿って迫ってくるのを感じた。
ベイリンは通路の端に飛びのいて回避し、そして閃光によって見たのだ。鎧を貫かんばかりに鋭い槍が森に向かって消えていく様子を。
すぐさま追いかけたが見失ってしまい、ベイリンは激情から大木目掛けて自分の槍をぶつけたところ、反動で落馬してしまった。
再び馬に乗ると、ペラム王の宮廷にたどり着いた。
宮廷はかなり荒廃しており、コケむした様子である。
またコウモリとかフクロウが住んでいる様子でもある。
ベイリンを見たペラム王の家臣は大声で尋ねた。
「騎士殿、卿はなぜ盾に王家の紋章を付けているのですか?」
「最も美しく、生きている人間の中で最高の婦人が与えてくださったのです」
ベイリンはこう答えると馬を止め、宮廷に入っていた。