8章 黯然銷魂
ランスロットと王妃が行ってしまうと、ベイリンは木陰から出て来て独白した。
「…王妃と臣下? じゃ俺の見たものは何なんだ?
乙女と恋人? じゃ、俺の耳にしたものは何なんだ?
親父は俺を怒りとともに生み出した。そのせいで、俺は幾多の困難に直面した。何も学ぶことができなかったためだ。
俺は、騎士に相応しい人間じゃない。田舎者の、道化、、、、じゃないか」
ベイリンは黯然銷魂とした気分で槍と盾を取ると、王に許しを得ることもなくその場を走り去った。
狂わんばかりに、新たな冒険を求めて…。
ベイリンはベイランが辿ったのと全く同じ道を通り、かつてベイランとともに過ごした泉を見、ため息をついた。
(ここで、ベイランとともに過ごした時以上に幸せなだったことはあっただろうか?)
その後、馬に乗って進むと、物憂げに木を切っている男を見つけた。
「おい、そこの木こり!」
ベイリンはそう叫んで馬を降りた。
話しかけられた木こりは不思議そうに、
「騎士様、貴方はこの森の悪魔を倒すことはできすでしょうか」
「悪魔だろうが魔王だろうが、俺の目の前にあわられるのなら、退治してやるさ」
「いいえ、騎士様」と木こり。「オラのいう悪魔は本当にいるのです。おらは昨晩、悪魔の光を見ましたもの。
それから、噂ですがガーロン卿は黒魔術を学び、姿を消したまま馬に乗ることができるそうです。
あの洞窟を見てくださいよ。」
「ふん、嘘つきめ。ファンタジーなこと言ってないで、ちゃんと仕事しろよ」
そう答えると、ベイリンはその場を離れた。
今、手綱は緩め、無頓着に。
今、拍車を自分に叩きつけながら。
今、うなだれながらも長い道のりを。