7章 マーリンは2度笑う

 

 

 

こうして捕虜となったマーリンは悲しみ、森へ帰りたがった。

そして縄から逃れようと抵抗し、また微笑むことも、飲食することを拒んだ。

こうしてマーリンが苦しむことはガニエダをも悲しませた。

ラゼルフ王はマーリンのために用意した宴会を拒否されたことと、マーリンの姿を見て悲しんだ。

マーリンを憐れんだラゼルフ王は、市場で売られている珍しいものを見ればマーリンの機嫌がよくなるかもしれない、考えた。そこで、マーリンを街に連れて行くように命令を出した。

 

宮殿を連れ出されたマーリンは、粗末な身なりの守衛に出会った。

守衛は着物を得るために、通りかかる人に対して震える唇で金をねだっている。その場にいたマーリンは、貧しい守衛に驚くとともに呵々大笑した。

また、マーリンがそこから出発すると、新しい靴を抱え、継ぎを当てるための革を購入している青年を見た。またもマーリンは呵々大笑すると、自分を見つめる人がいる市場に行くのを拒否し、これ以上は先へは進まないと言った。

一方でマーリンは森を求め、なんどか森を振り返った。また、行く先を決めることが禁じられていたのだが、何度か自分の行きたい方向を指示することもあった。

 

帰還すると、家来はマーリンが二度も笑ったこと、森に逃げようとした事を報告する。

ラゼルフ王はどすればマーリンを笑わせることができるかを知りたいと望んでいたから、すぐに命令を出した。

その命令とは、どうして笑ったのかを説明しさえすれば、拘束を解除し、森に帰る事を許可するというものであった。大喜びしたマーリンは答えた。

 

「ある守衛は門の外に座っていたんだけど、、ボロを着て、通行人に服を買う金をねだっていたんだ。あいつは貧乏ではあるけれど、いつでも大金持ちになれるはずなんだよね、だってあいつの下には大量のコインが埋まっているんだから。可笑しくてしょうがないよ。あの守衛の座っている地面を掘り返してみな、長年埋められているコインが見つかるからね。

それから、俺は市場に連れて行かれたんだけど、そこで靴と補修用の革を買っている男を見たんだ。革を買っていたのは、擦り切れて穴の開いた靴を修理するためだろうね。これも笑っちゃって仕方ないんだが、可愛そうにも奴は靴を履くとか、継ぎをあてることはなんかできないんだよ」

 

マーリンはさらに付け加えた。

「だって、あいつは今頃溺れ死んでいて、岸の方へ流れているんだから。行って見てみればいいよ」

 

ラゼルフ王はマーリンの言葉が真実か試す気になり、すぐに家来に命じて土手へ向かわせた。

岸の近くて溺死している男を発見できるかもしれないからである。

王の命令に従い、家来達は川でゴミと化した継ぎはぎようの革と、水死体を発見したので、直ちに事実を報告した。

さらに王は守衛を追い払った後、地面を掘り返してみると財宝を発見した。

ラゼルフは呵々大笑すると、マーリンを崇めたのであった。

 

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