8章 マーリンの要求

 

 

 

こういうことが起こったあと、マーリンは人間のたくさんいる都市を嫌うようになり、早いうちに慣れ親しんだ森に帰りたいと思うようになった。

王妃はマーリンに対し、もうすぐ白き冬になるのだから、森で生活するのは延期して、自分達と一緒に暮らすように助言した。

冬を過ぎ、夏になればマーリンが生きられるように美味しい果物ができるし、太陽によって気候も暖かくなるからと。

だが、マーリンはこの提案を拒否し、冬の厳しさを嘲笑すると森に出発することを望んだ。

 

「妹よ、どうして俺が森に行くのを止めるんだい?嵐を伴う冬もボレアスも、恐れるに足らないよ。たとえ残忍な突風が荒れ狂っても、雹が羊の群を傷つけるとしてもね。南風が雨雲を呼んできたとしても、俺を止めることはできない、どうして俺がさびれた森、緑の森林を求めてはいけないんだ?俺は、喜びとともに霜に耐えられるだろう。木の葉と花の香に包まれて、夏に寝転がるのは楽しいものだぜ。だけど、冬に飢えないように、木で家を建ててくれよ。そして、大地が作物を、木が果物を作らなくなったときには、俺のために使用人を待機させておいて御飯を食べさせてくれ。その家には70のドアとたくさんの窓も付けておくれ。夜には窓から、フォボス(火星の衛星)と金星、その他の星々が輝き、動いていくのを観察したいんだ。星の動きで王国に何が起きたのかを知ることができるから。それから、70人の書記官も配置しておくれ、俺の指示に従うように訓練させて、俺の予言を石版に記録させるんだ。妹よ、君も俺を癒す御飯と飲み物を持って来てくれても構わないよ。」

 

このように喋り終えると、マーリンは急いで森へ出発した。

 

 

ガニエダはマーリンの頼みを聞きいれ、家を建築させた。さらにマーリンが望んだものを全て家に納めさせた。

リンゴが実り、フォボスが星々より高くあるころ、木の葉の下で楽しみ、心地よいそよ風を感じながらあてもなく森をさまよった。

だが、冬は冷たくも厳しい風が吹かせ、木々から実を奪い去った。マーリンは雨によって食べ物を失い、飢えと悲しみに支配されながら妹に作らせた家にやってきた。

王妃はしばしば訪問すると、兄に食べ物と飲み物を振舞った。食事をして回復したマーリンは立ち上がって妹を称賛した。

それから、家の周りをぶらぶらしつつも星を観察し、未来に起こりつつあることなどを予言した。

 

 

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