6章 オルランド救出作戦

 

 

 

さて、第2巻の末尾から置き去りにしていた、オルランドの物語を再開することにしよう。

『笑いの川』に飛び込んだ伯爵であるが、彼はそこでナイア(※注 ギリシア神話に登場する水の妖精)と出会えてことに歓喜し、また水面下の世界を見つけたことを喜んで、自らの意思で囚人として留まることを決意した。

 

この川の中は魔法で拡張されていて、常緑樹でいっぱいになっていた

ここにやってきたルッジェーロ、グラダッソ、フロリマール、フロリドリたちは、オルランドの救出を決意する。

 

この森に入り込むことはできないように見えたが、フロリドリの助言に従って騎士たちは馬を下りると、自分たちで道を切り開いて進むことにした。

ルッジェーロはこの進行作戦に従い、月桂樹の木を剣で切り倒した。

木が切り倒されるや否や、その幹から美しい乙女が姿を現し、木下氏に慈悲を願った。

彼女が言うには、騎士が眼にしている木々の中には、いまルッジェーロによって倒されたのと同様、魔法を受けた彼女らの姉妹の妖精たちがいるのだという。そして、彼女たちは解放されるまで姿を帰られているが、いまやったように、閉じ込めている木を破壊することで元に戻れるのだという。

 

「ですが、この方法による救出も、完全とはいえません」と乙女が言った。

「私たちが森の中で木に変えられるのをお望みでないのなら、これをやり遂げるため、私と一緒に泉の中に入っていただかなければなりません」

 

ルッジェーロは彼女の願いを聞き入れると、川のほうに向かった。

それから魔法の誘惑を受け、彼女と手を取り合って魔の泉の中に飛び込んだ。

 

そのころ、グラダッソは道を開くためにトネリコの木を切り倒したが、この木は馬に姿を変えた。

グラダッソがその馬に乗ってみると、馬はたちまち彼を空に投げ出して、他の囚人たちのいる魔法の川に投げ込んでしまった。

 

(※注 著者はこの冒険について、トルクァート・タッソの物語との関連性を指摘している)

 

フロリドリの忠告を受け、フロリマールはいかなる方法で誘惑がなされてもこれに耐え、ついに泉のある水辺にたどり着いて冒険を成功させた。

もしも聡明なフロリドリの助けがなかったなら、彼も他の者たちと同様、魔力にやられていたに違いない。

 

――安全を求めるならば、魔法の薔薇の

――花飾りを眉に乗せるべし。

 

(注 薔薇が魔法の触媒になるという発想は、古く紀元2世紀ころに詩人、アプレイウスやルキアノスの時代と同じくらいに古くからある。彼らの著作と同じように、この神秘性は同じ起源に遡ることができるだろう)

 

救い出さなければならない他の者たちのため、彼女はフロリマールに対して自分と同じ装飾を手渡した。

花飾りを身につけると、彼はあずやまの水晶の中で発見した騎士たちに近寄った。それから、彼は水晶の中に飛び込んで、囚人たちに花飾りを与えた。

たちまち魔法は解けてしまい、邪悪な性情は消え去った。そこで皆は快く地上に向けて帰っていった。

 

魔法の脅威から解放されてすぐ、グラダッソは自分が長い冒険の途中であることを思い出した。彼はドゥリンダナを手に入れるため、オルランドとの決闘を始めてしまう。

だが、仲間たちが戦いをやめるように説得と、婦人用の小馬に乗った小人が騎士に嘆願をしたことによって中止された。

 

こうして戦いがやめられると、オルランドはフロリマールとフロリドリを連れてパリに向かい、ルッジェーロとグラダッソは小人についていくことにした。

著者は、ルッジェーロたちより先にオルランドとその仲間たちについて語ることにしよう。彼らはパリの手前までやって来たが、アグラマンテによってこの都市が包囲されていた。包囲している軍を見れば、ロドモン、マンドリカルド、フェッラウ、新たに到着したグラダッソ、その他にも立派な異教徒の戦士がいた。

2人の戦士たちが異教徒軍の野営地に向かう間、フロリドリは安全のために森の中に隠れた。

この危機的状況で、シャルルマーニュは打って出る作戦を主張し、これはオルランドとフロリマールによって指示された。また、この日において両陣営において武運はちょうどつりあっていたらしい。

 

著者はこの話を中断し、キリスト教徒が異教徒軍の待ち伏せを撃破する間、ルッジェーロと分かれたところまで語ったブラダマンテについて取り扱うことにしよう。

彼女は怪我に苦しみつつも、1人で旅をした。ついに隠者の住処にたどり着いた彼女は、そこで頭の怪我を見るため髪を切られ、包帯を巻いてもらい、最終的に負傷を完治させた。

 

 隠者の住処を出発した彼女は、再び1人で旅をした。

 森で馬を降りて寝ていると、フロデスピナという王女がやってきたが、彼女は眠り込んでいるブラダマンテを見てびっくりした。髪を切ったブラダマンテのことを男だと思い込んだのである。

 王女は侍女たちと狩の途中であったが、ある思い付きのよってブラダマンテをそのまま森に留めておき、仲間たちと狩を続けた。

 

 ですが、詩人は貴婦人と愛についての詩をここまでにして、フランスがイタリアに対して軍備をしていること、および地平線から昇り来る太陽について語らなければならない。

 もし許されるのならば、この未完成の物語の続きを書くことがあるだろう。

 

 これにて、『恋するオルランド』の物語を終える。

 

 明日への若木と、新しい活動の場へ。

 

 

2010/09/20

 

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