3章 不死身のオッリロと海魔オルク

 

 

 

マンドリカルドはグラダッソと一緒に、自分の旅路を進んだ。

その他の者らについて述べると、イスラム教徒の言語を知っていたグリフォンとアクィランテは異国を旅することになったのだが、彼らは旅を勧めていくとある海岸で2人の乙女と出会った。乙女のうち片方は白を、もう片方は黒い服を着ており、2人の小人をお供に連れていた。

乙女らの服の色は、それぞれお供の小人と、乗っていた婦人用の小馬の色と対応している。こう言った点を除けば、2人の乙女は同じくらいに美しく優美であり、それぞれを見分られないほど似ていた。

 

「姉妹よ」と、乙女のうちの1人が仲間に対して語りかけた。

「宿命に逆らうことはできないわ。ただ、ある種の知恵ならば運命を操作できるかもしれません。

フランスに対してやってくる宿命が来るまで、この話はここまでにしましょうか」

黒貂(クロテン)の毛皮の服を着た乙女は、このように白服の乙女に話しかけたが、近寄ってくる2人の騎士たちはこの言葉に耳を貸さなかった。

乙女らは近寄ってくる2人の騎士に対し、礼儀正しい仕草で挨拶をした。

 

淑女のうちの1人は、騎士たちに対して助けを求めると、すぐさま彼らはどんなことであろうとも、彼女らのためになることをやり遂げよう、と誓った。

乙女の願いとは、オッリロ(※注 Orrilo、発音は適当)という悪党と戦うことである。オッリロはナイル(エジプトの都市)にある塔に住んでいるが、ゴブリンや妖精を生み出す力を持っている。そして彼の住む塔には、人肉を餌とする竜の一種とされるクロコダイル(※注 「ワニ」と和訳当てると感じが出ないのであえてクロコダイルと訳す)が防衛しているのです。

さらに乙女は、オッリロはたとえ死に掛けても、不死鳥のように復活する能力を持っているため、いまだかつて誰もこの悪党を殺せた者はいない、と説明をした。

以上の説明を聞いても、兄弟たちは勇気を失うことはなく、再度協力を申し出た。

 

さて、アクィラントは、オッリロが旅人と通せんぼしている場所で彼に遭遇した。そしてオッリロは手痛い攻撃を受けると、クロコダイルが集まる自分の塔に逃げ込んだ。

 

グリフォンは、兄弟の助太刀をすべきときが来たと判断し、ついに2人でクロコダイルを殺してしまった。

オッリロは追い詰められ、もはや抵抗できないように見えた。

彼は何度も馬から突き落とされ、幾度も兄弟たちに両断されたが、すぐさま体を元通りにさせて復活し、戦いを続けるのであった。

すでに日は沈み始め、2人の兄弟は絶望し始めていた。

 

いま語ったとおりの状況にあったところ、舞台には新しい出来事が起きた。

巨人を捕虜にして牽引する騎士が姿を現したのである。

だが、著者はグリフォンとアクィランテ、および新たに登場した騎士とその捕虜についての話をここまでにして、ともにフランスを目指し旅をしているマンドリカルドとグラダッソについて語らねばならない。

 

いくつかの地方を通過し、2人はある海岸にたどり着いた。その海岸には、淑女が鎖でつながれ、海岸にさらされていた。

2人が彼女にわけを尋ねると、彼女は説明を始めた。

彼女はこの場所で、恐ろしいオルク(※注Ork、オークとも。海の魔物)が自分をむさぼり食らうためにやってくるのを待っているのだという。

乙女は、慈悲を掛けてくれるのなら、この場に置き去りにして恐ろしい宿命にさらすよりも、今すぐに殺してくれるように懇願した。

このような安楽死の他に乙女が望んだことは、ただダマスカス王ヌールッディーンに対して自分の死と、末期の際まで彼に対し愛情を持っていたことを伝えてもらうことであった。

 

だが、騎士たちは乙女の命を助けるといって譲らず、ついにオルクとの激闘が始まった。

現れたオルクの姿は不明瞭でぼんやりしており、まさに怪物のように巨大だった。

グラダッソはすぐに敗退した。誓いのために剣を使うことができないマンドリカルトは魔物の前から逃げざるを得なかった。

 

だが、彼が逃げていると助けるためのすべを見つけたのである。崖を早歩きで移動していたところ、彼は巨大な裂け目を見つけたので、一か八か、思い切って割れ目を飛び越えたのである。

オルクも彼に続いたが、裂け目を飛び越えることができず、穴の中に落ちていってしまった。

 

(※注 のち、『狂えるオルランド』でもオルクが登場する。このオルクは、オルランドが退治した)

 

敵との戦いを終えたマンドリカルドは、グラダッソとルキアナ(岩に鎖で繋がれていた乙女の名前はこう言った)を探すために海岸まで降りて行き、彼らと合流してから海岸沿いに進んだ。

やがて彼らは、遠くにキプロス王にしてロードス王である、チバーノの旗を掲げる船を見つけた。チバーノは、ルキアナの父親にあたり、娘を探している途中だったのである。

目にした光景に歓喜したルキアナが肌着を使って合図をすると、これを受けてガレー船が陸地にやってきた。

彼女と、彼女の庇護者らはこの船に乗り込んだ。

だが、船が船尾を岸から離すか離さないうちに、巨大な山の欠片を肩に乗せてオルクが再び姿を現した。

 オルクは海面をうねらせると、マストの頂上まで飛び上がった。

乗組員は全員船の底に逃げ込んだが、巨大な蛇の衝撃で船は投げ出され、瞬間的に吹いた陸風が、船を海に吹き飛ばした。

 

(※注 のち、『狂えるオルランド』において、オルクはオルランドが錨でぶん殴ったりして退治する)

 

オルクから逃げ切ったけれど、ある危険のかわりにまた別の危険がやってきた。嵐が強くなってくると、あたりは闇につつまれ、動揺が広がった。

この状況下で夜がやってくると、船は風が吹くままに流された。

翌日になると、彼らは状況の好転に気がついた。朝になると、彼らはアクア・モルタ(※注 Acquamorta、発音は適当)の海岸にたどり着いた。この海岸は、フランスとスペインを分断する山の中にある。

 

彼らは今いる海岸がどんな場所であるかをまったく知らずに、ルナと呼ばれる洞窟のそばに上陸した。

チバーノとルキアナをこの場に残し、グラダッソとマンドリカルドは武装し、馬に乗ると情報収集に出かけた。

 

2人がほとんど進まないうちに、彼らは戦争の轟音を耳にした。音のするほうに馬を進ませると、そこではアグラマンとシャルルマーニュが闘っていた。

 

2010/09/20

 

back/next

top

inserted by FC2 system