第5章 大泥棒ブルネロ

 

 

 

アルブラッカではサクリパンとマルフィーザが相互に激しい敵意を抱きながら一騎打ちを続けていた。

一方でアンジェリカは戦士たちに囲まれつつも、要塞の城壁の上から戦いのようすを観戦していた。

注意力のすべてが決戦に向けられているうちに、(読者諸君は記憶しているでしょうか?)、ブルネロはアンジェリカから指輪を盗み取ってしまった。すなわち、彼はアルブラッカの城壁にたどり着くと、要塞の岩や壁をよじ登り、群集が決戦の行く末について議論しているすきに王女に接近し、指から指輪を抜き取って、引き続き起こった混乱のうちに逃げ出してしまったのだ。

 

うまく地面に降りたドワーフは要塞の周りの堀を泳ぎ、2人の戦死が休憩のために離れているところに出くわした。彼はすぐさま、さらに盗みをしてやろうと計画を練った。

そんなことを考えつつも、ブルネロはサクリパンに近寄った。サクリパンは恋の空想に耽っているところであったので、馬から少し離れた場所に座っている。ブルネロは第一に彼の馬の腹帯を緩め、鞍を木片で下から支え、下から馬を引いて行った(※注 著者によれば、ドンキホーテでも、同様の手口による馬泥棒が登場するそうです)。

 

少し離れた場所にいたマルフィーザは、驚きつつこの様子を目にしていたが、自分の剣が盗まれてしまっているのに気がついて狼狽した。

剣を盗まれたことに気がつくと、直ちにマルフィーザは泥棒を追いかけて行った。

だが、ブルネロが盗んだばかりの軍馬・フロンティアッテはすぐに追跡者との間の距離をあけてしまったのである。

 

一方でアンジェリカの方は他の者たち以上の不幸を味わっていた。宝具の紛失に気がついた彼女は絶望し、さらには護衛兵からアルブラッカの前までさらなる敵兵がやってきたという報告を聞かされたのである。

新たな敵兵はトルコ軍で、トロリンド(Torindo、発音は適当)の兄弟であるカラモーノ(Caramono、発音は適当)が率いていた。彼はテュッフラディノによって捕虜とされていた貴公子であったが、他の者たちが同意したように彼らを牢獄から救出することを拒否し、兄弟を連れてアルブラッカにやってきたのである。

 

もはやアンジェリカに残された最後の希望はグラダッソである。彼はアンジェリカとは親類であり、フランスへの侵攻を計画していた男である。

そこで、サクリパンはグラダッソに向け、救援を求める使者を派遣することを請け負った。

 

そのころ、ロドモンテはアグラマンテがシャルルマーニュに対する攻撃命令を出すまで待つことにイライラし、ついには勝手にフランスへ向けて出向していた。

凄まじい嵐が彼の戦艦を王国の海岸に難破させてしまったけれど、嵐が過ぎ去ってしまうと、力強い足取りで上陸を果たした。そしてキリスト教徒側に対してこれまで以上の戦いを強いることになった。もっとも、最終的にキリスト教徒側が優勢になるのではあるけれど。

 

ガン(ときたまガヌロンとも呼ばれることもあった)は、以前からマルシウスをフランスに迎え入れるという、裏切りの連絡を入れていた。

この四半世紀において最大の事件が準備されているのであるが、著者はオルランドについての物語を再開しなければならない。

 

2010/08/13

 

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