16章 フロリマールの結婚
フロリマールたちはしばらく黙っていたが、ドリステッラは騎士の無口ぶりをからかい、冒険の旅について退屈しのぎを提案した。
この申し出は受け入れられたので、乙女は以下のような物語を話した。
「私の父はドリストン(※Doliston、発音は適当)といいます。2人の娘がいて、長女の方は子供のころ、リサ(※注 Lissa、ありふれた地名だけど、たぶんイタリア北部。あとあと辻褄が合わないけど)の海岸にいたところを誘拐されました。
この娘は近所の王の息子、セオドアと婚約をしていたのですが、行方がしれません」
「ところで、お母様の名はなんとおっしゃるのです?」
フロリドリが質問した。だが、フロリマールは物語を遮る質問を中断させたため、ドリステッラはまた物語を語り始めた。
「私の義理の兄弟となる予定だった人は、いまでも私たちの家族とこれまでどおりの付き合いをしています。そして、彼と私はお互いに恋仲になったのです。
青年はついに私の父に対し、私と結婚させてくれるように頼みました。
お恥ずかしいことですが、父はその日、私を貴方が宮殿で殺してしまった悪漢と結婚させると言い出しました。
「私が結婚させられた悪漢はブルサのウスベック(※注 ブルサは、トルコ北西部の都市。Usbeckの発音は適当)と言う名のトルコ人でした。
彼は戦場では勇敢ですが、その他の場所では凡庸で、とうてい女性の愛を得られるような男ではありませんでした。
彼は私を憎むに比例して嫉妬深い人間でしたが、あるときギリシア皇帝からヴァッターロ(※注 Vatarone。検索して見つからなかったけど、イタリアの都市、Vattaroのことかもしれない)の探検に参加することを命じられました。
彼が私を残して出発する際、ガンボーン(※注 Gambone、発音は適当)という奇形の怪人に私の世話をさせ、決して私のそばから離れないように命令したのです。
ウスベックが不在になってあまり時のたたないうちに、セオドアがブルサにやってくると、ガンボーンを倒し、私のベッドにやってきました。
「長い時間を掛けて情を交わし、私たちが満足していると、ある夜のこと、ウスベックが突然ブルサに帰ってきたのです。そしてすぐに家に入れるように命令してきました。
このような状況下でも我らは勇気を捨てず、セオドアは闇の中に階段をすべり落とし、ウスベックが気がつくのと同時に逃げ出しました。
ですが、私に対しての危機はいまだ終わっていません。
夫はドアの止め具の様子から、この部屋がずっと密室にされていたのかということに疑いを持ち、私の部屋の中を探し回りました。そして私の恋人がこの場に残していったマントを発見してしまったのです。
疑いを確信にかえると、夫は嫉妬に高ぶった激情のまま叫び声をあげ、すぐに奴隷のガンボーンを処刑するように命じました。
この国の慣習にしたがって、彼に仕える奴隷たちの手によってガンボーンの処刑の準備がなされ、町中に角笛の音が鳴り響きました。
ここでセオドアが行列に出くわすと、彼は自分のマントを盗み出したとして、彼を罪人と罵り、豪雨のような非難を加えたのです。
これは、セオドアによる、真相を知らないウスベックに対する作戦でした。セオドアは奴隷を助け出すと、私が間男をしたという貞淑さに対する疑いを晴らしました。
ですが新たな罪として私とセオドアは関係を続けていると、夫の新たな嫉妬を買い、ついに私は魔法を掛けられてしまったのです。もっとも、これは貴方が解呪したのですけれど。
あとから彼のために働く魔法使いのため出てきた巨人と蛇も、監禁を続けられなかったのです。」
ここまで話したところで、盗賊の襲撃にあったため、乙女の話は中断された。
この盗賊たちは撃退され、その首領はフロリマールの手によって生け捕りにされた。
首領は騎士の足元にひざまずいて、どうかリサにだけは連行しないでくれ、と懇願した。
この男はかつてリサの国の貴公子ドリストンの一番上の娘を誘拐し、娘をシルヴァン・タワーの領主に売り飛ばしたことがあったため、ドリストンの復讐を恐れていたからである。
首領の話を聞いたフロリマールは、(もう少しで明らかになるけれど)ある秘密の事情からどうしても彼をリサに連行する、と主張した。
彼らがドリストンの城に到着してみると、この城は王がドリステッラとの結婚を許さなかった復讐のため、セオドアによって包囲攻撃を受けていた。
いまになって、ようやくすべての問題が解決することにある。
シルヴァン・タワーでフロリマールから求愛を受けていたフロリドリはドリストン王の行方不明の娘であることが明らかにされたからである。
ドリストンとセオドアが和解をすると、もはや何の障害もなくなったとして、セオドアとドリステッラ、そしてフロリマールとフロリドリは結婚をすることになった。
2組の結婚を記念して長々と祝宴が繰り広げられたが、オルランドの探索を気に掛けるフロリマールとフロリドリは、順風を受けてフランス行きの船に乗った。
だが、突然に風向きが変わって嵐になってしまった。そのため、採取的に彼らはカルタゴ(※注 カルタゴは北アフリカの都市。なにゆえ北イタリアのリサからフランスを目指すのにカルタゴに流れ着くのかよくわかりません。方向逆じゃないか、と。もしかしてリサが北イタリアとは別のリサかもしれないし、地理にむちゃくちゃな作品なんで素で間違えているのかもしれない)の海岸に流れ着いた。
自分の安全よりもフロリマールと仲間たちのことを心配するフロリマールは、キリスト教徒であることを隠し、自分の身分をディスタント・アイルズのモノドンテ王の息子とだけ名乗った。そして旅の目的を、ビゼルタのアグラマンテ王を訪問することだ、と言ってのけた。
彼は常にフロリドリを気に掛けながら首都ビゼルタを目指して出発した。
ビゼルタでフロリマールは歓迎をうけた後、フランス侵攻のため、ルッジェーロと一緒にアグラマンテによって出発させられた。
2010/09/08
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