13章 アンジェリカが嫌悪の泉の水を飲んでしまうこと

 

 

(すでに説明したように)、アンジェリカを取り戻したパラディンの方は、シリアの海岸のように安全な道を通って本国を目指していた。

途中で彼は、ダマスカス王ヌールッディーンを乗せた船がキプロスを目指して出港しようとしているところに出くわした。ヌールッディーンはキプロスで最初に腕試しをしようとしていたのである。

 

この原因はルキアナという淑女への愛にある。彼女はキプロス王チバーノ(※注 Tibiano、発音は適当)の娘である。

キプロス王は王女を賞品として馬上槍試合を開催したのだが、ヌールッデーン(※注 12世紀のヌールッディーン・マフムードのことか? 明らかにシャルルマーニュの時代と違うけど。よくある名前だし、イスラムの王様くらいに考えればいいかと)はオルランドに対しても一緒に来ないか、と誘いを掛けた。

伯爵は自分の名前と出身地を偽ってチェルケス人のロドモンと名乗り、アンジェリカとともに仰々しい行列を引き連れたヌールッディーンの申し出を受け入れて、同行することにした。

オルランドが甲板に乗り込むと、すぐに陸地からそよ風が吹いてきて、ガレー船は出航した。

 

さて、開催された馬上槍試合には多くのギリシア人や異教徒らが参加しており、その中にはトルコ人のバサルド(Basaldo、発音は適当)とモルベコ(Morbeco、発音は適当)、ギリシア人のゴスタンゾ(Gostanzo、発音は適当)などがいた。

ゴスタンゾはコンスタンティノープルの皇帝、バタロン(Vataron、発音は適当)であり、ギリシアでの宮廷での歓待を求めていたが、グリフォンとアクィラント、それからオリジッラをお供に連れていた。

 

試合では、選手の一方はゴスタンゾの旗の下に整列し、もう一方はヌールッディーンの旗の下に整列する。

グリフォンとアクィラントはゴスタンゾ側、オルランドはヌールッディーンの陣営に所属していた。

彼らはお互いに変装していたのであるが、グリフォンだけが第一日目に名誉を得た騎士はオルランドではないのか、との疑いを持った。というのもこの騎士は卓越した戦闘技術の持ち主であったし、彼らの目の前で名誉を受けた淑女たちの中にアンジェリカの姿を目にしたからである。

 

トランペットの音が鳴り響き試合が終わった後、グリフォンはこの疑念をゴスタンゾに告げたところ、狡猾なギリシア人は恐るべき対戦相手を避けることを決意した。

ゴスタンゾはこっそりとオルランドと面談すると、キプロス王が彼を狙っていること、ガヌロンが裏切りを企んでいていることを教えたうえ、これを逃れる方法を提供すると言った。

その方法とはオルランドのため、小川に用意された船である。マガンツァ家への復讐を決意すると、オルランドはアンジェリカを連れてフランス行きの船に乗り込んだ。

 

プロヴァンスに上陸した彼らは、陸路を進んでアーデンの森にたどり着いた。この森は、かつてリナルドが「愛の泉」の水を飲んだ場所である。気温が高く、また疲れていたので、偶然にもアンジェリカは「嫌悪の泉」の水を飲んでしまった。

 

その森で、伯爵と乙女は見知らぬ騎士にであった。

この騎士とは、リナルドに他ならぬ。彼はロドモンを見失い、そのロドモンはフェッラウと戦っていた。

徐々に近づいてきたリナルドは喜びとともにアンジェリカと、新しい鎧と偽の紋章を身につけて彼女と同行するオルランドに気がついた。

こうして出会った彼らの会話は、容易に予想ができるものであった。

アンジェリカはリナルドを嫌悪の目で見ることになり、オルランドとリナルドは親類同士なのに争い始めてしまった。

 

戦いが始まったことに驚いたアンジェリカは森の中を逃げ出してしまい、天幕の張られている平地に出てきた。

ここはシャルルマーニュが予備兵隊を率いて野営をしていた場所であり、ロドモン軍の侵略に進軍した主軍隊の援護をする役目を任せられていた。

乙女から話を聞いたシャルルマーニュは、2人の従兄弟の戦いをやめさせると、喧嘩の原因となったアンジェリカをバイエルン公ナモに引き渡した。そして、シャルルマーニュは、サラセン人との最初の戦いで最高に彼女に相応しい働きをしたものに彼女を与えると約束した。

 

だが、ここで著者はアフリカのカレナ山のふもとで馬上槍試合を開催しているアグラマンテについて語らなければならない。

 

2010/09/02

 

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