第10章 リナルドが愛を取り戻し、ついにルッジェーロが登場すること

 

 

 

フェッラウとロドモンの間で決闘が始まったけれど、著者はこの騎士らの戦いをここまでとして、リナルドについて物語をしなければならない。

彼はまだロドモンを追跡していたのだけれど、ロドモンはフェッラウと交戦中である。

リナルドがアーデンの森の草地をさ迷っていると、裸の美しい男の子が、やはり彼と同じほど美しい3人の裸の乙女たちと踊りをおどっているのを見て驚愕した。

うっとりとその光景を眺めていると、男の子はリナルドの元に近づいてきた。彼はリナルドの兜を薔薇やユリの花の枝で殴りつけ、リナルドを落馬させた。

リナルドは地面に落ちるや否や、踊り子たちに拘束され、引きずられ、気を失うまで花の枝で叩かれた。

呆然とするリナルドに対し、この集団の中の1人はパシパエ(※注 ギリシア神話に登場するミノス王の后?)となのり、この仕打ちはすべての物を従える力、「愛」にさからったがゆえの刑罰だ、と言った。

そして、もはやリナルドが負った傷を治すには、愛の泉の水を飲むしかない、と言った。

 

痛みに気を失いそうなくらい弱ったリナルドは、森の中を引っ張られた。のどの渇きに苦しんでいたので、森で見つけた泉の水を、夢中で、むさぼるように泉の水を飲んだ。

繰り返し甘い味のする水を飲んでいると、逆に心に苦味を感じた。そのうちに体力と記憶を回復させる。そこで彼はこの場所が、かつてアンジェリカが自分の顔の上に花の雨を降らせ、また冷たくこの好意を跳ね除けた場所であることを思い出したのである。

 

この思い出を取り戻したリナルドは、自分が起こした罪についても理解した。恩知らずな振る舞いに酷く後悔すると、バヤールに飛び乗ってアンジェリカを探し、ひざまずいて謝罪をするためにインド(※注 原文ママ。アンジェリカがいるのはキタイ(契丹)、すなわち中国なんだけど、たぶん、作者はキタイとインドの区別がついてない)に向かった。

それほど馬を走らせないうちに、彼は遠くに婦人用の小馬に乗った乙女の姿を発見した。この乙女は騎士に世話をされていたが、この騎士に騙されており、火山に向かう途中だったのである。

だが、この騎士と乙女が誰であるのかを説明するまえに、著者はブルネロを追跡中のマルフィーザについて語ることにしよう。

 

すでに彼女は15日間もブルネロを探し続けていた。

彼女の馬は追跡の途中、ついに倒れこんでしまったため、馬から転がり落ち、ブルネロを追いかけるより良き方法が必要になった。

 

マルフィーザは苦しみに襲われていた。

一方、ブルネロは彼女より先に海辺にたどり着き、出港準備をしている船に乗り込むと、アフリカのビゼルト(※注 チェニジアの都市)に到着した。

この地でブルネロは、アトランテの魔法を打ち破り、ルッジェーロを手に入れるために指輪を欲しがっていたアグラマンテに面会した。

ブルネロは王の前にひざまずき、アンジェリカから盗み取った指輪と、オルランドから盗み取った角笛を披露した。

アグラマンテ王は任務の成功に歓喜すると、ブルネロをティンタジナの王にした。

 

いまやブルネロを含めたアグラマンテの臣下のたちは、みなルッジェーロの捜索に行きたがった。

一行が出発し、大砂漠を越えて、カレナ山に到着した。

山のふもとは肥沃で木がよく茂った平野が広がり、海につながる大きな川が流れていた。

また、ふもとからでも山頂にある美しい庭園を目にすることができた。この庭園の中にアトランテの屋敷があるのである。指輪はかつて目にすることができなかったものを見られるようにする力があったので、楽園の姿を目にすることができるようになったが、アグラマンテや彼の臣下たちはその中に入ることはできなかった。

山を構成する岩石は急で、かつ滑らかなために登攀することができないのである。ブルネロでさえも山を登るという考えを捨てざるを得なかった。

それでも、ブルネロはこの冒険の達成を諦めたりするようにことはしなかった。アグラマンテ王の許可を得たブルネロは、平地のところで騎士や廷臣らを集めて馬上槍試合を開催した。

これはルッジェーロを要塞からおびき寄せるための企画だったけれど、この作戦はうまくいった。

 

ルッジェーロは馬上槍試合に姿を見せると、ブルネロからサクリパンのものだった馬、フロンティラッテを贈与された。この馬はのちにフロンティノ、と改名されることになる。さらに、オルランドが使っていた、バリサルダの剣をも与えられた。

この一行の中で、ルッジェーロは裏切られて傷を負うことになるけれど、彼自身の手によって復讐が果たされた。ルッジェーロは山頂に戻り、アトランテの技術と世話で体を癒やした。

彼は先だってブルネロからフランス侵攻について聞かされたうえ、馬と武器を受け取っていたので、この侵攻作戦に参加することにした。

 

ここで著者は再びルッジェーロをカレナ山にとどめ、オルランドとフロリマールについて語ることにしよう。

 

 

2010/08/25

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