第4章 オルランドの怪物退治

 

 

さて、彼をこのような楽園においたままにするのは気がひけるのだが、著者はオルランドに付いて語らなければならない。

彼はアンジェリカを求めて遥かかなたのタニスにたどり着いた。

オルランドはそこで、巨人によって息子が捕虜にされたことを嘆く老人に出会う。

そこで、オルランドが息子を開放してやると、老人はオルランドに感謝し、彼に1冊の本をプレゼントした。この本を使えば、いかなる疑問も解決するというのだ。

 

オルランドが本を使ってみると、スフィンクスを探せとの指示が得られた。スフィンクスに頼めば、アンジェリカの居所を知るのに性格な情報を得ることができるというのである。

そこでスフィンクスを尋ねてみると、この怪物はオルランドに対し、アンジェリカはカタイの国、アルブラッカという街にいることを教えてくれた。

だが、スフィンクスもオルランドに対し、ある問い掛けをした。もしこれに答えられなければ、スフィンクスは彼を殺してしまうのである。

こうして、オルランドはかつてオィディプス(※注 出典はギリシア神話)が解いたのと同じ謎を答えなければならなくなった。

 

オルランドにとってこの謎々は、決して解けない結び目みたいなものだ。そんな、結び目を解くためには、アレクサンドロス大王のように剣で切り裂いてしまう他はない。

オルランドはドゥリンダナの剣を抜くと、怪物に襲いかかる。

最終的に、スフィンクスは住処としていた大岩から転落し、死んでしまった。

 

義務から開放されたオルランドは、スフィンクスの謎々の答えを知るために、例の本を開いてみた。

スフィンクスの謎々とは、「最初は4本だが、その後に2本足になり、最終的に3本足になる動物は何か?」というものであり、答えは「人間」となる。

というのも、赤ちゃんは手足を使って這い回るが、大人は足のみで歩く。そして老人は杖をつくからである。

 

疑問を解決したオルランドは、また本を使い、行く手について指示を得た。

やがて彼は深くて危険な川にたどり着いた。その川岸は険しくて、とても歩いて渡れそうもない。

オルランドは、橋を見つけるまで川沿いを馬に乗って進み、橋の手前で馬を降りた。

 

その橋には巨人がおり、「この橋は『死の橋』という名前だ。この橋にたどり着いた者は、ほとんど死んでしまうからな」と言った。

じっさい、あたりの道はすべてこの危険な川につながっており、川に落ちてしまえばオルランドであっても岸に上がることはできないだろう。

オルランドはほんの少しだけこの警告について考えたが、橋に向けて進み、巨人と戦うことにした。

決死の戦いが繰り広げられたが、いつもどおりの結果となった。すなわち、オルランドによって巨人が殺されてしまったのである。

しかしながら、巨人は川に投げ落とされる前に、鋼鉄の投網を投げつける。

網に絡まったオルランドは、剣を使って網を切ろうとするが、剣は手から離れており、網によって包み込まれたまま身動きができない。

 

網に絡まり無力化したオルランドであるが、そこに修道士がやってきた。

修道士も協力してくれるものの、やはり網は外すことができない。修道士は慰めの言葉で精神を癒そうとするが、これはオルランドを不快にさせるだけであった。

それでも、修道士は慈悲を受けるべき罪人に対して説法を続けた。その例証として、この修道士自信が神の恩寵によって奇跡に的に達成できたことを話し始めた。

 

この修道士は仲間の僧たちと旅をしているのだが、サイクロプスに脅かされていたという。サイクロプスというのは一つ目の巨人で、修道士の仲間を食事として食べてしまう怪物だ。

この修道士は、運良く死体だと思われて、サイクロプスの住処とする大岩から投げ捨てられたのだ。

そして、まだ明るかったので木の枝に隠れて、夜を待って脱出したのだという。

 

修道士がこうして説明をしていると、まだ話が終わっていないのに、走ってこの場を逃げ出した。

なぜなら、修道士は、これまで話していたサイクロプスが突如視界に入ったことに恐怖したためである。

棍棒と、3本の杭で武装していたサイクロプスは、修道士を追いかけるでもなく、オルランドの前で立ち止まった。

 

サイクロプスは手を伸ばし、近くに転がっていたドゥリンダナを手にとるとオルランドに斬りかかる。が、魔力を帯びたオルランドの肌(※注 オルランドの肌はダイヤの硬さで、足の裏以外の部位が怪我をすることがない)を傷つけることはできず、鉄の網だけをばらばらに切り裂かれた。

自由になったオルランドはすぐ立ち上がる。彼の体は、打撃によって肉が裂けることがないにせよ、骨がきしんで痛みを感じた。

武器を交換する形で、オルランドは巨人の棍棒を奪い取り、互角の戦いが始まった。

オルランドの肌は無敵であるが、巨人の鎧もグリフォンの爪でできた一品であり、たがいにダメージを与えることはできなかった。

ドゥリンダナの攻撃を受けていると、オルランドは巨人が棍棒とともに3本の杭を持ってきていたことを思い出した。

オルランドは杭を拾い上げると、そのうち1本を1つ目巨人の単眼を刺す。この杭は脳を貫き、サイクロプスは死んでしまった。

 

オルランドがサイクロプスを退治すると、さきほど逃げ出した修道士が喜びによって震えるのと同じように、恐怖に体を震わせて再登場した。

彼はオルランドに対し、仲間たちを解放するため、いっしょにサイクロプスの住処に同行してくれるように嘆願した。

 

この後修道士の願いを聞き入れてから、さらにオルランドは旅を進めた。

何本もの道が交差する場所で、彼は使者に出会った。

この使者はアンジェリカが派遣したものであり、オルランドにあるニュースを伝えた。なんでも、タータールの皇帝・アグリカンが彼女の父・ガラフロン王の統治するアルブラッカを包囲攻撃しているのだという。このアグリカンはアンジェリカに求婚しているが、これに失敗しており、ついに武力行使にでたのである。そのため、使者はチェルケス王・サクリパンのもとに援軍を求めに良く途中なのだという。

オルランドはアルブラッカまで一日のうちに到達できる距離におり、またアンジェリカの役に立つことができる、ということを知ると大喜びで馬を進めた。

 

馬を進めるオルランドは、山と山をつなぐ橋にたどり着いた。そんな橋の下には川が流れており、水が泡立っている。

橋のそばには黄金のゴブレットを持つ乙女がおり、彼女は優美な仕草で、「この橋を渡る者にはゴブレットの中身をプレゼントすることになっているのです」と言った。

オルランドは彼女が差し出したゴブレットを受け取り、パラディンにふさわしく礼儀正しく飲み、中身を空にした。

 

オルランドがジュレップ(ウィスキーに砂糖などを加えたもの)を飲み込むと、たちまち頭が朦朧とし始めた。もはや、オルランドは自分の旅の目的を忘れ去り、自分が誰であるかすらわからなくなってしまった。

このような陶酔状況で、オルランドは乙女の後にしたがって宮殿の中に入っていってしまった。

 

 

 さて、伯爵(オルランドのこと。史実だとオルランドはブルターニュ辺境伯)についての話はここまでにして、著者はグラダッソについて語らねばならない。

 

2010/06/10

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