41章第4話 エッツエルは息子を失うも、気丈に振舞うこと

 

ディートリッヒが戦場に戻った頃には、ジフカ軍で生き残った兵もすべて撤退していた。
だが、ディートルマルの息子は勝利に喜ぶことはできず、エッツエルの2人の息子たちをむざむざ殺させてしまった以上、フン族の国に帰ることもできない。
もはや、王国を取り戻すために協力してくれたエッツエルのため、復讐をやり遂げること以外は何もしたいとは思わなかった。

ディートリッヒは、弟のディートヘア、エルプ、オルトウィンのために悲しみにくれると、彼らの遺体を埋葬した。
それから、フン族の戦士であるラディーガー辺境伯に対し、兵をフン族の国まで帰還させるように命令し、辺境伯はこの命令に従った。
エッツエルの元に帰還したラディーガー辺境伯は、彼の息子である2人の王子が死んだと言う訃報を報告する。

王妃は嘆き悲しんだ。
エッツエルも深い悲しみにおそわれていたが、

「戦においては、人死など珍しいことでもない。
来るべき時がくれば、例外なく人は死ぬだからな」
と、言い放った。

さらに、エッツエルはラディーガー辺境伯に質問した。

「ところで、ディートリッヒとヒルデブラントはどこだ?
なぜ、我の前に姿を見せないのだ?」

「彼らは嘆き、我が軍から離れていきました。
エルプさまとオルトウィンさまを殺させたからには、陛下と顔を合わせられない、と言っておりました」
辺境伯は答えた。

報告を聞くと、エッツエルはディートリッヒに対して2人の騎士を使いにやったが、断固としてディートリッヒはフン族の国に帰ることを拒んだ。

最初は怒りに震えていた王妃であったが、自らディートリッヒに面会を求めてきた。

「息子たちは、エルプとオルトウィンはどのようにして戦ったのですか?
フン族の王子にふさわしい、勇敢で立派な戦いをしたのでしょうか」

「はい、」とディートリッヒは答えた。
「恐れることなく戦ったから、王子たちは命を落としたのでございます」

王妃はディートリッヒにキスをすると、しばらくの間さめざめと泣いた。
それから、ディートリッヒを連れてエッツエルの元に帰還した。

そして、王の前で膝をついたディートリッヒは、王子たちを死なせた責任をとるため、自分の命を賭けてフン族との同盟を守り、自分の命を差し出すことを誓った。
だが、エッツエルは彼を立たせると、キスをして椅子に座らせた。
こうして、ディートリッヒとエッツエルの友情は、これまで以上に強固なものになったのだ。

2010/03/07

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