40章第1話 エルマナリクが乱心し、ディートリッヒが追放されること


エルマナリク王は強大な君主であり、サウスランドの全ての領土を支配して降り、また王として毎年多くの貢物を献上させていた。
これは、ある戦争のさい、彼の甥であるディートリッヒは、旗下の武将から武勇優れたヴィテゲとハイメを援軍をして派遣していたときの出来事である。

エルマナリクには邪悪な宰相が仕えていた。
彼の名はジフカ(Sibeche、訳者には発音はよく分からないんで自信なし)といい、王がジフカの妻と過ちを犯したため(※訳者注 分かりにくい表現を使ってるけど、不義密通と訳してもいいかなと思う。)、王を恨んでいた。
ジフカは王を殺してやろうと考えたが、やがて考えを変えた。むしろ王の手で彼の子を殺させた上、王の親類たちとの間で戦争を引き起こしてやろうと考えたのである。
ジフカの復讐はなんとも恐ろしいものであった。
なにしろ、優れた騎士たちの多くが命を落とし、長い期間、激しい戦争が続いたのだから。

さて、エルマナリクには3人の子どもがいた。
ジフカは1人目の王子と、王の後妻であるスヴァンヒルト(※訳者注 サガなどに登場する、英雄シグルトとグズルーンの娘。)に対して讒言をした。
こうして王子はしばり首にあい、グズルーンの娘(※訳者注 スヴァンヒルトのこと)は馬に踏み殺されてしまった。
2人目の王子はブリタニアに使者として派遣されたのだが、彼の船には浸水しやすい細工が差れており、海に沈んでしまった。
3人目の王子はジフカの助言を受けてノルウェーに貢物を要求するために出かけたところ、その地で殺されてしまった。

邪悪な嫌疑はエルマナリクの甥であるハールングス(※訳者注 Harlungs、発音は適当。もしかして複数形で種族やら民族を表してんのかも?)にまで及んだ。
彼らの間で戦争が始まり、エルマナリク側がこれに勝利すると、負けたハールングスたちはライン地方の砦で虐殺されてしまった。

粛清の嵐は、同じくエルマナリクの甥であるディートリッヒにまでやって来た。
ジフカはエルマナリクに対し、アメルングの勇猛な王に対しての悪意を生じさせた。

「陛下、甥御さまの王国は年ごとに勢力を増してゆきますなぁ。」
ジフカは嫉妬深い王を煽るようにジフカは言う。
「そのうち、甥御さまは陛下の国を侵攻するかもしれません。
今のうちに、毎年の貢物を要求して威嚇しておくべきではないかと」

これをうけてランドルト(Randolt、発音は適当。どうせ端役だし。)が貢物を要求するためにベルンに遣わされた。
ディートリッヒは侮蔑をもってこの要求を拒否した。
甥の拒絶に激怒したエルマナリクは、彼を反逆者としてしばり首にすることを宣言した。

ヴィテゲとハイメが王をなだめるが、これは成功しなかった。
エルマナリクはジフカの言葉に従い、ベルンに向けて大軍を出兵させる。
ディートリッヒも出陣すると、おじと戦場で対面する。
その戦いでは夜襲が成功したこともあって、ディートリッヒ側が勝利し、エルマナリッヒ軍は撤退した。

だが、ディートリッヒ側には軍資金が不足しており、これ以上の戦闘と継続することが困難な状況であった。
そこで、老ヒルデブラントとポーラのベルトラン(ポーラは地名)は、自分の持つ黄金の全てをディートリッヒに献上することを申し出た。
こうして、ウォルフハルトやデーン人のディートライプなどの騎士が500頭の馬と軍資金をベルンに護送した。
この情報を入手したエルマナリクは、護送部隊に待ち伏せを仕掛ける。
この待ち伏せが成功し、ディートリッヒ側の最も優れた騎士の全ては虜囚になり、また軍資金も略奪されてしまった。
ただ1人、ディートライプだけは脱走に成功すると、この悲しい知らせをディートリッヒ王に報告した。

ディートリッヒはエルマナリクに使者を派遣し、賠償金と引換に捕虜たちの解放を願い出た。
しかし、エルマナリクはこの申し出を拒否した。そのうえで、ディートリッヒが王国から追放されない限り、騎士たち全てをしばり首にすると答えた。

ディートルマルの偉大なる息子は、高貴な心を持っていた。
彼は忠実な部下たちが殺されることに対しては、王として決して耐えることができなかったのだ。
ちょうどウィルギナル王妃が病で死去したため、彼は悲しみながらも、ヒルデブラントやウォルフハルト、その他の騎士たちが解放されるなら、自分は王国を去るとエルマナリクに対して答えたのである。

それを受けたエルマナリクは軍を率いてベルンにやってくると、ディートリッヒに対して彼の領地からの別離を命じた。そのため、ベルン王を愛していた市民たちの悲しみは非常に大きいものであった。
ディートリッヒの弟にあたるディートヘアはまだ子どもであったけれど、兄とともにベルンを出た。
老ヒルデブラントもまた妻のウテ(Ute)と息子のハトゥブラントをベルンを捨てて、王に従って出奔した。
また、他の騎士たちも王のために自らの国を捨てて王の後に従った。

2010/03/07

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