40章第2話 ディートリッヒが結婚し、また王位を継承すること

 

彼らはしばし傷を癒した後、3人はジェラスパントにあるレントウィンの父親のもと(※訳者注 原文は何の説明もないけれど、どうやらウィルギナル女王のとこと同じ感じ)に向けて旅を再開した。
ディートリッヒは麗しの女王ウィルギナルを一目見ようと強い情熱を持っていた。
拍車を入れて馬をせかせたので、王子は仲間の騎士たちからかなり先に進んでしまう。
仲間を待たずに先走ったことは彼にとって不幸なことであった。なにしろ道がくねっており、また手入れもされていないために通路からそれてしまっていたのだ。
そのため、ディートリッヒはニティギル公爵・ムター(Duke Nitger, called Muter、訳者には発音はどうにも分からないし、地理もわかりません。)の城に到着してしまったのである。

公爵はたくさんの巨人を従えており、巨人たちがディートリッヒの元に駆け寄ってくると、王子は自分をウィルギナル女王の城まで案内してくれるように頼んだ。
巨人は王子は快く王子の頼みを承諾したと見せかけて、王子が馬の向きをかえたところを見計らって棍棒で殴りつけ、彼を落馬させた。
こうして、ディートリッヒは拘束の上、地下牢に閉じ込められてしまったのである。
ただ、公爵の姉妹(※訳者注 原文から姉か妹かわかりません…)だけは王子に対して丁寧に対応したのである。
彼女の保護がなければ、王子は処刑されてしまっていただろう。

一方、ヒルデブラントはウィルギナルの城に到着したものの、そこで王子が虜囚になっていることを知らされた。
まず、ヒルデブラントはベルンに帰還すると、ウォルフハルトやヴィテゲ、ハイメなど多くの武勇優れた騎士を引き連れて戻ってきた。
騎士たちは公爵の城を包囲攻撃し、また12人の巨人と戦った。
激戦が続く中、ディートリッヒは脱獄に成功し、戦闘に参加した。
最終的に、ベルンの英雄たちが勝利し、巨人たちは殺された。

騎士たちは公爵も殺そうとしたのだけれど、彼の姉妹が助命を嘆願したので、ディートリッヒは公爵の命をとらないことにした。

戦いの後、騎士たちは全員でジェラスパントに向けて出発する。
途中で彼らの元にドワーフがやって来た。
小人が言うには、恐ろしきジャニバスが軍隊を率いてウィルギナル女王の城を包囲攻撃しており、女王の侍女たちと、彼女が持つ魔法の宝石を要求しているのだと言う。この魔法の宝石は、彼女の王冠に飾られているものであり、彼女の権威を領土の全てに及ぼす力があるのだ。

英雄たちは先を進む。
雪と氷で覆われた山脈を越えると、たちまちに轟音を立てて戦いが始まった。
ジャニバスの飼っている黒い猟犬たちの咆哮は、まるで冬の嵐のような凄まじい音だ。
また怪物たちも戦場におり、女王側の兵は苦戦に陥っていた。
そんな巨人の叫び声はまるで稲妻のようだ。

戦いの中、ディートリッヒは黒騎士の姿を見つけた。
この黒騎士こそがジャニバスに違いない、とディートリッヒは思った。
黒騎士は鉄のタブレットを持っており、そのタブレットには呪文が書かれている。
王子は彼に向けて突進する。ディートリッヒの剣が炎を吹いた。
ディートリッヒは鉄のタブレットを切り刻むと、邪悪な魔術を使う男を殺した。
チロル山に雷鳴がとどろくと、氷河は割れ、雪崩が邪悪なジャニバスの軍を飲み込んでしまい、たちまち敵軍はディートリッヒたちの視界から消え失せてしまった。
すぐに静けさと平和が戻り、恐ろしき戦いは終わった。

その戦いが続いている間も、山の城の最高の地位に1人で座っていたウィルギナル女王は、あいも変わらず美しかった。彼女の王冠の宝石が、きらりと輝きを発する。
銀のベールは彼女の体を覆って輝く一方、侍女たちは震えながら彼女の足元にひざまづいていた。

戦いが終わると、ディートリッヒは彼女の元を訪れる。

「英雄よ、」ウィルギナル女王は愛情を込めてディートリッヒを迎え入れた。
「私はもうこの国、すなわちエルフランドを統治することはできません。
あなたの武功を拝見しましたので、あなたのためにこの玉座と国を譲ります。
そして、私と結婚してはくださいませんか?
命のある限り、あなたを愛し続けましょう」

ディートリッヒとウィルギナル女王はその場で結婚し、豪華な式を挙げた。
エルフたちや英雄たちは山の城で酒宴をともにし、ワインを飲んで楽しんだ。
まもなく、ディートリッヒ夫婦と騎士たちはベルンに帰還し、市民たちから熱烈な喝采を受けた。

ディートリッヒとウィルギナル女王は幸せに暮らし、ディートマル王が死去すると、ディートリッヒは王位を継承した。
王国内は平和であった。
だが、外国では邪悪な企みがねられていた。
これから、ディートリッヒには邪悪な敵を完膚なきまでに叩きのめすまで、王国を追放される運命が待ち受けているのだ。

2010/03/04

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