39章第4話 妖精王の復讐で騎士全てが虜囚となること

 

ラウリンに先導された騎士たちは、平野や美しい森を通って進む。
途中、大きな菩提樹の気が生えており、その木には甘そうな匂いのする果実がたくさんなっている。
また、その枝には小鳥たちが陽気な歌をうたい、ディートリッヒの心を楽しませた。
そこで、ディートリッヒも小鳥に対して口笛を吹いて答え始めた。
しかし、ヒルデブラントは菩提樹から離れるまで口笛を吹かないように注意した。

ヴィテゲ以外の騎士たちは、みな気楽な様子であった。
ただ、ヴィテゲだけはドワーフに負けた苦い経験があったため、このドワーフが裏切るのではないかと警戒していたのである。

ウォルフハルトはヴィテゲをからかったが、馬に載ったヴィーラントの息子は先頭を進む。
そして、ヴィテゲは一番に城の入り口にたどり着いた。
入り口に鎖でつながれた角笛が吊るされているのを見つけると、ヴィテゲはその角笛を大きな音を立てて吹いてみた。
すると扉が大きく開き、騎士たちは城の中に入り込む。
そして、鉄の扉はみなが城に入ると、騎士たちの後ろで閉じられた。
また、騎士たちが黄金で輝く扉を通ると、その黄金の扉は素早く閉まる。

すぐに、ディートリッヒと騎士たちは明るく、広々とした広間にたどり着いた。
その広間には何百人ものドワーフがいた。
彼らは陽気であり、ダンスをしたり、トーナメントを楽しんだ。
上等のワインが騎士たちに配られ、ヴィテゲでさえラウリンへの警戒を忘れてしまい、みなが楽しみを享受した。
だが、ラウリンは悪だくみをはじめる。彼がディートリッヒと騎士たちに魔法をかけると、彼らは互いの姿が見えなくなってしまった。
そのため、彼らの目にうつるのは騒ぎ立てるドワーフたちと彼らが住む山の発展ぶりだけである。

やがて、美しいキューンヒルトがやってきた。
彼女は既に妖精王の妃になっており、頭には王冠をかぶっていた。
そして、彼女は多くの侍女を従えていたけれど、その中にキューンヒルト美しいものはいなかった。
ドワーフたちは琴を演奏し、ダンスをし、また一風変わった腕前を見せたりし、キューンヒルトの周りをスキップしながら回った。

彼女の冠の宝石が光を放つと、たちまち魔法の霧が消え去り、騎士たちは互いの姿が見ることができるようになった。
それからは大宴会が開かれた。

キューンヒルトは新愛を込めてディートライプを抱擁すると、彼を自分の隣りに座らせた。
こうして、キューンヒルトの席のそばにはラウリンとディートライプが座ることになった。
そして、宴会中、ディートライプとキューンヒルトは小声でなにか囁き合った。
実際、彼女は妖精の国で得た莫大な財産などを捨て去って、家族のいる故郷に帰りたいと考えていたのである。

また、ドワーフたちは騎士らを説得した武装を解除させた。
こうして、ドワーフたちは騎士を怖がることなく宴会を楽しむことができたのである。

夜になると、ラウリンはディートライプを離れにある小部屋に呼び寄せた。
そして、ラウリンはディートリッヒたちを見捨てるならば、彼に莫大な富を与えることを提案した。
しかし若きデーン人は、断固として裏切りを拒絶した。
この答えを聞くとドワーフは姿を消し、また部屋には鍵がかけられた。
さらに、ディートライプは魔法の力で目が見えなくなってしまったのである。

一方、こう言った事情を知らない騎士たちはワインを飲み、深い眠りに落ちていた。
復讐に燃える王、ラウリンはこのようにして騎士たちを手中に収めたのである。
騎士たちは鎖で体を拘束され、地下牢に投獄された。
さらに、騎士たちは魔法で目が見えないようにされていた。
こうして、薔薇園を荒らされた復讐は達成されたのである。

キューンヒルトは、騎士たちのために涙を流した。
彼女はドワーフたちが眠りにつくと、こっそりと兄の閉じ込められている部屋に忍び込む。
そして彼女は、ラウリンの使った視力を奪う魔法を解除する力を持つ金の指輪を1つだけ手渡した。
こうして視力を取り戻したデーン人は自分と、それから仲間の騎士たちの武器を回収した。

そのころ、ディートリッヒは眠りから覚めていた。
自分が鎖で縛られていることに気がついたディートリッヒは激怒した。
ドワーフの腰帯を持っていた彼は既に視力を取り戻しており、また口から吐いた炎で自分を拘束していた鉄の鎖を溶かして自由の身になった。
それから、彼は仲間たちの元に向うと、同じく炎の力で拘束具を溶かしてしまった。

その後、ディートライプがみんなの武器を持って駆けつけると、ディートリッヒはドワーフたちと激闘を開始した。
ただ、仲間たちは相変わらず魔法がかけられており、視力を回復していない状況である。
やがて、ディートリッヒはドワーフの1人から金の指輪を1つだけ奪い取ると、これをヒルデブラントに渡す。
こうして、視力を回復させたヒルデブラントも戦いに参加すると、多くのドワーフたちが倒された。
数千ものドワーフが命を失ってしまい、もはやラウリンの城には3人の戦士(ディートリッヒ、ディートライプ、ヒルデブラント)に対向できるものはいなくなった。

だが、ラウリンは逃げ出さない。
大きな音を立てて角笛を吹き鳴らすと、棍棒で武装した5人の巨人を援軍として呼び寄せた。

ウォルフハルトとヴィテゲはまだ盲目ではあったが、周囲で戦いの轟音が鳴り響いていることに我慢できず、勇敢にも乱闘に参加した。
キューンヒルトがさらに宝石で飾られた金の指輪を2人に与えると、彼らの魔法も解除され、視力を復活させた。

5人の巨人と5人の騎士は長い間激しい戦いを繰り広げた。
だが、1人また1人と巨人が殺されてゆき、ディートリッヒ側が勝利を収めた。
ラウリンの王国での大虐殺の激しさは、それが完了したとき、英雄たちは膝の深さまでできた血溜まりの中を歩かなければならないほどであった。

こうして、ドワーフの王は囚人とキューンヒルトを解放させられた。
ディートリッヒと騎士たちはそれぞれ莫大な宝物を持ってベルンに帰還した。
その旅路の話題といえば、ラウリンと、ディートライプの美しき妹・キューンヒルトについてである。

2010/03/2

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