39章第3話 薔薇園を荒らしたヴィテゲは報いを受け、老戦士の助言でディートリッヒが勝利したこと


薔薇園が荒らされたことを知ったドワーフ王ラウリンは激怒すると、馬に乗り、全身に鎧を身につけ、また手には槍を握る。
彼の身長はわずか3スパン(1スパンが23センチ。およそ70センチ)ほどしかなかったが、剛力の持ち主であり、また戦闘技術も熟達していた。

「我が薔薇園をこれ程に荒廃させるとは、お前に対して何か恨みを買うようなことをしたか?」と、ラウリンは泣きながら言った。
「お前の右手と左足を置いていけ。それが償いだ」

ヴィテゲは嘲笑と侮蔑を持ってドワーフに返答した。
彼はドワーフの魔力とたいしたことがないと思い込んでいたのである。

ラウリンの鎧はダイヤモンドの輝きを放ち、いかなる剣も槍でも、彼を傷つけることはできない。
また、ラウリンの腰帯は、これを身につけたものに12人分の力を与える。
頭には輝く王冠の載せられているのだが、ここが唯一の弱点となっている。
もし、黄金の鳥がまだ生きていたのなら、こう言った情報を歌で教えてくれただろう(※訳者注 すいません、意味がわかりませんでした。とりあえず、弱点はあるけれど、それは読者にだけ提示するみたいな感じかな、と)。

ヴィテゲは槍を下げたが、ラウリンは激し行く突進してくる。そして、ラウリンの最初の一撃で、ヴィテゲは落馬してしまった。
たちまち、ヴィーラントの息子は捕虜にとられる危険にさらされてしまう。
ここで、ディートリッヒは、ヴィテゲの不始末を償うために賠償金として黄金を支払うことを申し出た。

「そなたの薔薇も、」と、ディートリッヒ。「5月になれば、また咲くだろう?
ヴィテゲを許してやってくれないか?」

しかし、ドワーフは、すでに充分な黄金を持っていること、一度散った薔薇はもはや元通りにならないことを理由にディートリッヒの申し出を拒否した。

「もしかして、このドワーフを恐れているのか?」と、ヴィテゲはからかうように言った。
「王子がラウリンとの戦いに尻込みするせいで、このおれが死ぬことになるとはな!」

部下である騎士の酷い言葉に憤慨した王子は、ドワーフ王に一騎打ちを申し込んだ。

このとき、ディートリッヒにとって都合の良いことに、老ヒルデブラントとその親類のウォルフハルト、デーン人のディートライプたちが馬に乗って追いついてきた。
老戦士は王時に対してドワーフとの戦いを避けるように助言した。

「もし、どうしてもたたかうと言うのなら、馬から降りて剣と剣での戦いをするべきですな。
ただ、奴の鎧は貫けません。ダイヤモンドの魔力が込められているため、いかなる武器でも対向できないのです。
だから、守りの薄い頭を攻撃するのですぞ」

ディートリッヒは、ヒルデブラントの助言通りに戦った。
すぐに馬から降りると、ラウリンに対し剣での戦いを挑んだのである。
激しい戦いが繰り広げられた。
王子は幾度もドワーフの頭を打ったため、ドワーフ王は危うく気絶しそうになった。
だが、ここでラウリンは「幻惑のマント」を使い、ベルンの王子からその姿を見えないようにしてしまった。

何箇所も怪我をしていたディートリッヒであったが、すでに戦いによる熱狂に支配されている。
ドワーフの姿が見えなくなったが、両手で抱きつくと取っ組み合いを始めた。こうすれば、相手の姿が見えなくてもあまり関係はない。
そして、王子の口からは炎が吐き出される。
この炎を浴びて死なない生物はいないのであるが、それでもラウリンには効果がなかった。

「そいつから腰帯を剥ぎとるのです!」と、ヒルデブラントが叫んだ。

これに従って、なんとかディートリッヒは魔法の腰帯を剥ぎ取る。
この腰帯はドワーフに剛力を与えていたものであったが、この強力がディートリッヒのものとなった。
ディートリッヒは小柄な王を地面に投げ飛ばし、「幻惑のマント」をはぎ取った。

死の恐怖を感じたラウリンは、ディートライプに対して命乞いをした。
彼は、美しき妹のキューンヒルトがどこに閉じ込められているかを知りたがっていたから、ここでラウリンを殺したくないと考えた。
こうして、ディートライプのとりなりでドワーフ王はディートリッヒの復讐をまぬがれたのである。
ラウリンはディートライプに対して感謝を述べ、また彼と義兄弟の契りを結ぶことを誓ったのである。
それから、ラウリンは王子と他の騎士を山の中にある城に招待した。

2010/02/22

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