9章 ブリタニアの将来1

 

 

 

「ブリトンの狂人よ、充分以上に富を得て、実体以上に名誉を得ている男よ(以下、予言部分は『ブリタニア列王史』11章参照)。

フリアエ(ローマ神話の復讐の女神。ギリシア神話のエリニュスに対応)の刺激によって、皆は平和を楽しまず世は乱れる。

身内は争い、内乱が起きるだろう。主の教会は荒廃し、聖なる司教たちは辺境に追いやられるだろう。コーンウォールの猪(モンマスの『マーリンの予言』だとアーサー王を意味する言葉)の甥(原文のラテン語を確認してないが、英文の「nephew」の意味は「甥」でなくて「grand-nephew」、つまり甥であるモードレッドの息子と解するほうが適切らしいです)は全てに乱をもたらし、互いに罠を仕掛けると呪わしき剣で互いに殺しあう。

奴らは平穏に王国を支配することを望まず、王冠を簒奪する。それから4代後の王(『ブリタニア列王史』だとアーサーの後継者であるコンスタンティヌスから4代後の王はカレティクス)はさらに残酷で厳しいことになるだろう。この王は海の向こう狼の征服者が戦い、セヴァーン川で蛮族の王国に打ち破られる。蛮族はキレケストリア市を包囲する。スズメとともに城壁と軍事基地を破壊するだろう。王は船でゴールを目指すが、剣によって殺されるだろう。

ラゼルフも死んでしまえば、(この部分については特別な説明がない。一方、マーリンのモデルになったライロケンやミルディンはラゼルフの死をちゃんと予言している)、混乱を望む者がスコットランド人とカンブリア人を長期間に渡って支配する。その支配はカンブリア人が己の牙を成長させるまで続くのだ。ウェールズはコーンウォールのグエント(Gwent。ウェールズの古い文献、『Red Book』だとヴォーディガンはグエントの伯爵になっている)を襲撃し、その後のコーンウォールではいかなる法でもウェールズ人を押えつけられなくなる。

ウェールズ人は流血を好み、人民はどうしてこの所業を許しているのかと神を恨むだろう。残忍なことに、ウェールズ人は兄弟どうしで戦わせ、親類どうし殺しあうことを強要する。

スコットランドの軍隊はたびたびハンガーに侵入すると、無情にも反抗する者を殺害するだろう。その族長は馬に由来する名前をもっており(HengistHorsusMarchあたりだろうと思われるが、他の資料と整合性に欠ける)、それゆえに激しい気性の持ち主だったのだが、その罪ゆえに殺されてしまうだろう。その後継者達は我らの土地から追い出されることになるだろう。我らの軍事力は蛮族のそれと対等ではないだろうから、スコットランド人は、すぐに我らの剣を鞘に納めさせるだろう。また、ダンバードンは破壊され、スコットランド人を打ち負かすまで、いかなる王も修復することはできないだろう(ダンバードンは736年にピクト人、870年にバイキングにより破壊されている)。

羊飼いどもがだいなしにしたカーライルは、獅子の王が管理権を取り戻すまで空っぽのままだろう(カーライルはバイキングによって破壊され、ウィリアム2世によって再建されている。また、1133年にヘンリー1世が司教の地位を新たに設立した。ちなみに、ヘンリー1世は『マーリンの予言』で「正義の獅子」と呼ばれている)。ウェールズ人が元の領域に帰るまで、軍事基地や物見の塔、広大な宮廷は嘆きとともに荒廃するだろう。ポーチェスターは狼の牙が力を回復するまで、城壁や港は荒れたままになるだろう。リッチボロー市は海岸に港を広げ、フランドル人は再び紋章入りの船を建設するだろう。

それから5代後の王は聖ダヴィデの城壁を再建し、長年に渡って蛮族との国境を押し下げるだろう(『ブリタニア列王史』7章に対応。ただ、異説もあるようです)。レギオン市(ウスクとチェスターの間だと思われる)は貴方の懐に入り、長期間に渡って市民は失われるだろう、あぁセーヴァンよ。子羊の中で熊が帰還すると、レギオン市は再建されるだろう(アウグスティヌスに言及している、と解釈する説がある)。

 

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