17章 マーリンは正気を取り戻す

 

 

〜これまでのあらすじ

タリエシンの登場によって、テーマが神学・歴史と迷走しはじめた本作。

え、題名は『マーリンの生涯』だよね、という展開でしたが、ようやく本筋というか「マーリンの物語」が始まります。

 

 

こうしてマーリンが喋っていると、使用人が急いでやってくると突如山に新しい泉ができたことを説明した。その泉からは綺麗な水を湧き出されており、その水は渦を巻きながら谷を流れ、大地を流れて行っていると言う。

 

マーリンとタリエシンは立ち上がると、その新しい泉を見るために出発した。泉を見るとマーリンは草地に座り込み、水が沸き出ている様子を褒め称えた。そして大地からこのような泉がわき出したことに驚くのだった。

やがて喉が渇きてきたので、マーリンは下流の方へ向かうと水を飲み、こめかみを水に浸した。そのため、水はマーリンの腸や胃袋に流れ込み、蒸気はマーリンの体内に吸収された。

すると、マーリンは理性をとりもどし自分が何者であるかと理解するとともに狂気は消え去った。

長い間、理性はマーリンの中で鈍らされていたが復活し、かつてのように無傷の状態にまで回復したのである(ケルトの伝承では、このように唐突に癒しの泉が湧きでるのはよくあることだそうです)。

 

神を称え、顔を空の星に向けると、マーリンはこのように神を褒め称える言葉を発した。

 

「王よ、星輝く天空を統べるお方よ。海と、心地よい草で覆われた大地

を与えてくださり、子供達を養ってくださるお方よ。人類にも多大な援助を与えてくださるお方よ、理性が戻った、私の心から狂気が消え去りました!

私は自分自身を失い、そして精霊のように過去と現在を予知していた。

そして私は知ったのだ、物事の秘密、鳥の飛び方、星の運行、魚の泳ぎなどを。これらの法則は私を混乱させ、私に人間らしい精神を回復させることはなかった。

今、私は正気を取り戻し、活力は四肢に満ちているようだ。

 

「神よ、私を貴方に従わせてください。いかなる時でも喜びとともに、真心から、貴方に賛美をお捧げいたします。

貴方は寛大な御手は、この新しい泉を私のためお作りになったことで、二度も私に贈り物を下さいました。

今、私は失っていた水を飲み、これによって私の脳は回復いたしました。

どこからこのような徳目がやって来ることがあるでしょう。ああ、親愛なるお方よ、新たに泉を湧き立たせ、私に正気を取り戻させることが何処から来るのでしょう?」

 

 

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