3章 人間嫌い

 

 

だが、マーリンは宮廷で自分が耐えられる以上に集まった大群衆を見ると、再び狂気に陥り、興奮状態になり、森に帰りたがった。

そこでマーリンはこっそりと逃げ出そうとした。ラゼルフ王はマーリンに逃げ出さないように命じたうえ、警備を配置した。そして、マーリンの狂気はシタールによって癒されるようになった。

ラゼルフ王は苦しみに耐えながら、マーリンに分別を取り戻し、ラゼルフ王と一緒に暮らしてくれるように懇願した。つまり、リデルハが王位にあり、蛮族を支配しているときは、木々を望んだり、獣のように生活したいとか、木下で住居にしたいだとかは思わないでくれ、と言ったのである。

その後、ラゼルフはマーリンに色々と贈り物をすることを約束し、人民に対してマーリンのために衣服と鳥、犬と駿馬、黄金と輝く宝石、ウェーランド(Wayland)に彫らせた盃を持ってくるように命じた。

リデルハ王はこれら全てをマーリンに与えると、森ではなく自分達と生活するように勧めた。

 

だがマーリンは贈り物を拒否すると、こう言った。

「金がなくて困っている貴族達にこの贈り物をあげてくれよ。ヤツらはほどほどで満足すると言うことを知らないで高望みばかりしているから。こういう贈り物よりも、ケリドンの木立とオークの木、そびえたつ山々に足元には緑の牧草地というのが好きだな。君のくれるのでなくて、こういうモノの方が喜ばしいよ。だからリデルハ王よ、この贈り物をどっかにやってくれないか。愛するケリドンの森にはナッツがたくさんあるし、私が気に入るものはみんなそこにあるんだ。」

 

ついに贈り物で悲しみをどうにもできないことが分かると、王はマーリンが森に帰れないように鎖で縛りつけるように命令した。鎖に縛られ、ケリドンの森に帰る自由がなくなったことを知ると、マーリンは嘆き悲しみ、黙りこくった。表情からは喜びが消え、声も微笑みもなくしてしまった。

 

 

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