25章 旅の乙女


さて、妹姫の冒険は結構長い。
信じられないくらい長い。
そんな妹姫の冒険は、かなり本筋とはずれるのでダイジェスト風に紹介したい。

『獅子を連れた騎士』を求め、妹姫はいくつもの国を探しまわった。
しかし、一向に『獅子を連れた騎士』の消息は辿ることができない…。
女一人の旅は果てしなく厳しいものであり、雨が降れば雨に打たれ、風の強い日は凍えながら旅をする。
途中、妹姫は病気のため動けなくなってしまう。

あわや、妹姫の冒険もここまでか…と思ったのだが、旅の途中で出会った妹姫の友人の乙女が代役として旅をすることになった。
ちなみに、この妹姫の友人は、それなりに重要キャラなのだけれど名前がない。そのため、文章の主語がひどく取りにくいのだが、ここでは「旅の乙女」としておこう。
――ていうか、ここで新しいキャラに冒険を引き継がせる必要性がわからん。
最初から最後まで、妹姫が冒険を続ければいいじゃないか?

さて、「旅の乙女」は妹姫と違って、かなり要領がいい。
いや、ある意味で姉姫に出し抜かれて遺産をぶんどられた上、ガウェインに弁護を頼むのを出遅れたりとか、妹姫ははっきり言ってあまり聡明でなくて、旅の乙女の方が普通なのかもしれない。
むやみやたらと放浪した妹姫に対し、旅の乙女は『獅子を連れた騎士』の足取りを辿るという方法をとった。
まずは、イヴァンがガウェインの姪や甥を守るため巨人退治をした城に到着する(21章参照)。
この城で旅の乙女が、

「申し訳ないのですが、私は人を探しているのです。
『獅子を連れた騎士』という方を探しているのですが、御存知ありませんか?」

と尋ねれば、

「『獅子を連れた騎士』ですか!
ええ、彼なら最近までこの城に来ましたよ。」

と、領主が答える。
領主自身は『獅子を連れた騎士』の行き先を知らないけれど、どこに向かったかはわかる。
旅の乙女は、1晩泊めてもらって気力を回復させると、領主に案内されて『獅子を連れた騎士』が進んだという道を進む。

そうして旅の乙女がさらに進めば、今度は『獅子を連れた騎士』が3対1の決闘をしたという泉にたどり着いた(22章参照)。
そこで情報収集に努めると、教会でお祈りをしていたルネットに出会う。
旅の乙女が事情を話せば、

「『獅子を連れた騎士』を連れた騎士ですか?
はい、決闘のあと、重傷を負っていたので、ある領主の家で療養しているはずですよ。
たぶん、まだその領主の家にいるのではないでしょうか?」

と答えた。
――ところで少し気になるのだが、この時代、領主っていうのは、身元の知らない人を平気で泊めたりする習慣があったのだろうか?
なんか、普通にカログレナンなんかも見ず知らずの領主に世話してもらっていたし、妹姫やら旅の乙女なんかも、普通に見ず知らずの領主の家に宿泊している。

それはともかくとして、ルネットは仕事があるので同行できなかったが、旅の乙女はルネットに指示された道を進んだ。
すると、進んだ先には城がある。
だが、旅の乙女が城に到着するほんの少し前、ちょうど体を回復させた『獅子の騎士』は出発したところであった。
それを聞いた旅の乙女は、領主への挨拶もそこそこに、『獅子を連れた騎士』が向かったという道を進む。

はたして、旅の乙女がしばし馬を進めると……、いた!
写真などのない時代ではあるから、初対面の人物がどこのだれか、というのはなかなかにわかりにくい。
しかし、『獅子を連れた騎士』には非常にわかりやすい特徴がある。
旅の乙女が、見れば、道の先にライオンと一緒に旅をする騎士がいるではないか!

(この方は、まさに『獅子を連れた騎士』に違いない!
でも…、彼は私の願いを聞いてくれるかしら?
妹姫は一文無しだし…。)

不安を抱えながら、旅の乙女は、『獅子を連れた騎士』を呼び止めて事情を話した。
――つまり、姉姫が遺産を独占して、妹姫に対して全く分け前を与えなかったこと。
結局、アーサー王の仲介で、決闘裁判にて紛争を解決することになったこと。
妹姫は、決闘の代理人として『獅子を連れた騎士』を探す途中、病気になったこと、などを説明した。
ただし、姉姫の代理人としてガウェイン卿が選任されたことだけは説明しなかった。
なにせ、ガウェインは凄腕の騎士だ。下手に説明したら、おじけづいて依頼を受けてもらえないかもしれない。

「よくわかりました。もちろん、その依頼を引き受けましょう。」

と、『獅子を連れた騎士』は二つ返事で引き受けた。

「あぁ、ありがとうございます!」と旅の乙女は言った。「誰も妹姫の代理人を引き受けてくれないので、絶望していたところです。
ですが、貴方を探すのにずいぶん時間を使ってしまいました。もはや決闘の期日まで猶予はありません。すぐに来てくださいますか?」

「あぁ、もちろん!」

こうして、妹姫は『獅子を連れた騎士』を決闘の代理人とすることができた。
この続きは次回で。

2009/12/21

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