序章 聖霊降臨祭の夜

Arthur, the good King of Britain, whose prowess teaches us that we, too, should be brave and courteous, held a rich and royal court upon that precious feast-day which is always known by the name of Pentecost.

序文はままこんな感じ。
とりあえず、アーサー王を誉めたたえる言葉から入るわけです。
この文章を打っていてつくづく思うのですが、完全和訳にくらべると編訳は凄い楽です。
で、とりあえず最後の単語に注目。聖霊降臨祭(ペンテコスト、Pentecost)の日に物語が始まるというのは中世時代の伝統らしいのです。
そんなわけで、この物語も聖霊降臨祭の日から始まるというわけです。

さて、そんな聖霊降臨祭の日、みんなでご飯を食べた後、色々と世間話などもするわけです。
たいてい話題は恋についてとか、冒険の話が中心になるもの。
クレティアンによれば、昔はこういう派手な冒険譚みたいなのがたくさんあって、また恋というもの今よりずっと価値があったという。
たまに年寄りが、『昔は良かった』というのと同じ感じですね。こういうの、中世の時代からやっていたと思うと色々興味深いものがある。
ざっと抜き出してみますと、

「かつて恋と言うのは、礼にかない、勇敢で、寛容で、尊敬すべきものだと考えられていた。
しかし、今では恋は物笑いの種となってしまった。思慮のない人が愛について語るものの、それは偽りでしかない。」(6-7)

ま、クレティアンは古きよき時代の物語を書き、読者にそれを知って貰いたいということですね。
ここまでが前置きです。

そして、ちょっと脱線しましたが本編の、聖霊降臨祭の日の夕食後のシーンまで戻ります。
さて、騎士やご夫人達が恋やら冒険やらの話をしていると、アーサー王は椅子に座ったまま眠り込んでしまいました。
それでも、王妃は解散する気はなく、まだ話を続けます。
その場で会話していた騎士は色々いたようですが、主なメンバーを上げると、ドヂニル、サグラモアー、ケイ、ガウェイン、そしてイヴァン、カログレナントとといった者達です。
話題としては、あんまり格好のいいものではなくてむしろ恥になるようなものです。
これを聞きつけた王妃は、騎士達のところに近寄ってきました。
が、王妃がやってきたのを目にしたカログレナント卿は、これはマズイ、女の人に聞かせる話じゃないぞ、とその場を離れて生きます。ちなみに、このカログレナント卿、他の物語での知名度はイマイチですが、この物語ではそれなりに重要人物なので名前は覚えておいてください。

で、離れているカログレナント卿を目にしたケイが嫌味を言うわけです。
「おやおや、カログレナント卿はなんとも勇敢でございますな。
王妃さまだって、そなたのことを礼儀正しくて勇敢だと思うことでしょうよ。
私達は気が利きませんし、無作法でしてねぇ。王妃さまが来るのに気が付きませんでしたよ。」

「まぁまぁ、ケイ。」と王妃が言いました。
「あなたときたら、毒薬の詰まった小瓶みたいですこと。お仲間にそんなことを言っちゃダメですよ。」

それでも、ケイはなんか色々いって王妃をやりこめてしまいます。
みんながカログレナントの話を最後まで聞きたいと思っているのだから、王妃さまの方でカログレナントに話を続けるように命令しろ、とかまで言います。
カログレナントもこれ以上話はしないとケイに反論するのですが、これまたケイにやられます。
この当たりで察しの付いてる人もいるでしょうが、ケイという人物はこの物語ではいやな奴ですね。

王妃もうんざりしたのでしょう。
「カログレナント卿、ケイを相手にしちゃダメよ。この人は口が悪いんだから、争っちゃダメよ。それはともかく、話を続けてくださらない?」

この辺、あっさりとケイの方につく王妃が謎ですがそうなってます。ま、もともと話し聞きたくて来ているんですからね。

で、カログレナント卿はしぶしぶながら、

「うむむ、命令ならば仕方ありません。
話はしますが、愉快な話じゃありませんよ…。」

さて、カログレナント卿の話とは?
と言ったところで序章はおしまい。
続きは次回で。

2009/10/24

top/next

 

 

 

inserted by FC2 system