8章 美女コンテスト開幕

 

それから出発したリベアウスたちは3人はカーベイユ(Kardevyle。発音は例によって適当)と呼ばれる美しい街にたどり着いた。

 

そこで、彼らは頑丈な庭園と、王族が住むような石造りの城を発見した。

このようなものは、これまで見たコトもないようなものである。

 

リベアウスは、

「おおっ、なんとも勇敢な騎士に相応しいお城だなぁ!」

 

乙女は声を立てて笑いながら答えた。

「この城の持ち主は、このあたりではかなり優れた騎士ですよ。

この城があれば、昼でも夜でも戦い続けることができるし、ここで眠ることもできます。

そして、城主は美しくなくなりつつある愛人のため、美しい乙女を連れた騎士が通ると、白鳥のようなシロハヤブサを飛ばし、乙女を自分の所に連れてくるように言います。

だけど、もし乙女がそんなに美人でなければ、その騎士はグリフロンと戦わなければなりません。

そして、その騎士の腕前が悪かったりすれば、騎士は首を切られ、槍で貫かれた上で首を晒されます。」

 

これを聞いたリベアウスは、すぐにこう言った。

「聖ミカエルにかけて、ボクはそのグリフロンと戦うぞ。

シロハヤブサが来たならば、ボクが連れている乙女はこの町にいる御婦人と同じくらい美しいけれど、あえてグリフロンに挑戦してみせる!

で、もしグリフロンが君を見たいと言うなら、見せてやればいいのさ!」

 

これを聞いたドワーフは言った。

「リベアウスの旦那、そりゃかなり危険なことですぜ。

グリフロン卿の武芸はたいしたもので、彼が戦う様子を見るのを楽しみにしているのが大勢いるほどでさぁ。」

 

しかし、リベアウスはこう答えた。

「心配はないよ。

この街から西に1マイル進んだところで、そいつの顔をみてやろう。」

 

これ以上話すこともなく、彼らは馬に乗って街に入った。

そして、街では夜を静かに休むために宿を探した。

翌朝、リベアウスが名誉と勝利を得る日がやってきた。

 

彼は早起きすると、アントレ卿から貰った鎧で完全武装した。

それから、リベアウスは馬に乗り、その隣に馬に乗ったドワーフを従えると立派な城を目指して進んでいった。

 

早朝、いつものように早起きしたグリフロンは、王子のように誇らしげな様子でやってくるリベアウス・デスコヌスがやってくるのを目にした。

 

グリフロンは騒ぐことなく、馬に乗ってリベアウスの方に向かうと大声で叫んだ。

「お前は幸運をもたらしに来たのか、不運をもたらしに来たのか?

包み隠さず真実を述べるのだ。」

 

リベアウスは答えた。

「ボクは、お前と戦うためにやってきた。

お前の恋人であるご婦人の半分でも美しいものがいないというのにもかかわらず。

ボクはこの街に、ローブを着ているけれど、お前の恋人以上に美しい顔の人を連れてきた。

そして、お前のシロハヤブサはボクが奪い取ってアーサー王への贈り物にする。」

 

「騎士よ。では、どちらの乙女がより美しいか、試してみようではないか。」

 

「ようし、カードイユの市場に乙女を座らせて、市民達が乙女を見比べさせることにしよう。

もし、ボクの連れてきた乙女の方が美しくなかったら、シロハヤブサを賭けてお前と戦うことにしよう。」

 

グリフロンも、

「よろしいとも。

それでは、馬に乗って街に行くことにしよう。」

 

そうして、2人は手袋を掲げて誓いを立てた。

もはやその場に留まる必要のなくなったリベアウスは宿に戻ると、エレンに対し、最も美しいローブを着るように言った。

 

「これから、グリフロンのレディが街ににやってくるんだ。

そして、街の人達が君達を比べる。

で、もし君の方が美しくなかったら、ボクがグリフロンと戦い、シロハヤブサを賞品に勝ち取るからさ。」

 

こう言われたエレンは、セーマイト(金または銀の糸を織り交ぜた中世の絹織物)のローブを羽織り、さらに金糸で織った白いスカーフを身に付けた。

首を灰色と黒の毛皮でできたベルベットで覆い、手には金や、その土地で取れる最高の宝石でできた腕輪をはめた。

それから、リベアウス卿はエレンを馬に乗せると、ドワーフも含め3人で出発した。

 

男の市民達は2人の乙女を見るとこう言った。

「おっ、なんとも美しいレディが来るぞ。」

 

市場の真ん中で、エレンは馬に乗ったまま立ち止まった。

次に、グリフロンが2人の従者だけを連れ、馬に乗ってやってきた。

グリフロンは赤色の盾をもっている。さらに、その盾には銀色でフクロウが描かれており、ふちの部分は金でできている。

一方で、グリフロンの鎧はなんの色も塗られておらず、飾りもつけられていない。

そして、従者の1人はグリフロンの馬の前を歩き、3本の丈夫な槍を持っている。もう一方は、賭けの対象となったシロハヤブサを持って来ている。

 

その後に続き、紫色の服に身を包んだグリフロンの乙女が馬に乗ってやってきた。

遠くからも多くの市民が集まると、上品でほっそりしているグリフロンの乙女を目にした。

彼女は、豪華で王族が身に付けるようなアーミン(北ヨーロッパに生息するシロテン。ウィキペディア情報によれば、すごい高級で、王族のシンボルだそうな。)の毛皮を着ている。さらに、頭には宝石で飾られた金の冠を被っている。

彼女の頬は薔薇のように赤く、髪は金糸のように輝いている。さらには、眉でさえも絹のようであり、鼻はまっすぐで、目はガラスのような灰色。市民達が評したところでは、彼女の肌はミルクのように真っ白だったという。

そして、彼女の首は長く、ほっそりしていた。

まさに、彼女の美しさはとても表現できるようなものではない。

2009/8/18

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