終章 翼ある蛇

 

こうしてリベアウスが広間でお祈りをしていると、窓が開いた。

そして、リベアウスは不思議な光景を目にすることとなる。

 

壁の向こうから、美しい女性の顔をした蛇がやってきたのである。

さらに、その蛇には黄金のように輝くような翼が生えており、またその尻尾はおぞましく、足の爪は恐ろしいものであった。

リベアウスは恐怖で汗をかいてしまった。

その激しい恐怖のため、リベアウスは心に勇気が燃え上がることもなく、立ち上がることすらできなかった。

 

やがて、蛇はリベアウスの首に絡みついてくると、彼の口にキスをした。

蛇がキスをすると、たちまちに尻尾と翼が消滅し、なんとリベアウスの目の前には、これまで見たこともないほどに美しい裸の女性が震えていたではないか!

 

彼女は言った。

「騎士さま、私を死に追いやった邪悪な書記官、つまり私の宿敵は倒されました。

東から、北から、南から、何人もの男が奴らの魔法に倒されたことでしょう。

奴等は邪悪な魔法の力により私を蛇の姿に変えてしまったのです。

そして、この魔法はガウェインか、さもなくば彼の血を引く騎士が来るまでは決して解けることはないという残酷なものでした。

いま、私の命を救ってくださった貴方には、15の城を差し上げましょう。そして、アーサー王のお許しがあれば、私は貴方の妻となります。」

 

これを聞いたリベアウスは大いに喜んだ。

それから、リベアウスは乙女を残して馬にまたがると、取り逃がしてしまったジェインを探し回った。ジェインの魔法によって攻撃されることを恐れたからである。

 

馬に乗ったまま城門までやってくると、手綱を引いて馬を止め、ランバートや一緒に付いて来ていた騎士達に、マボンを殺したこと、ジェインに重傷を負わせたことを説明した。

さらに、美しいレディが魔法の力で蛇に姿を変えられていたこと、リベアウスとキスをしたことによって元の美しい姿に戻ったことも話した。

 

「でも、まだ彼女は裸のままなんだ。

それから彼女は、『私の宿敵、マボンとジェインは倒されました。これからは平和がやってくるでしょう』って言っていたよ。」

 

リベアウスがたった今やり遂げた冒険について警備隊長に説明を終えると、、警備隊長は部下たちに対し、すぐに紫のローブと灰色の毛皮、豪華なスカーフなどをレディのもとに運ぶように命令した。

やがて、美しく着飾ったレディが馬に乗って現れると、すべての市民達は彼女を連れて街まで行進した。

 

そうして街に入ると、みなはレディの頭に黄金と宝石で飾られた宝冠をかぶせ、大喜びで彼女の苦しみが終わった事を神に感謝した。

また、領主たちは彼女に対して敬意と忠誠を誓った。

このようにして、リベアウスは悪魔の魔の手から美しいレディを助けだしたのであった。

 

それからリベアウスたちは7晩の間ランバートの城に滞在した。

彼らは名誉と喜びを高貴なるアーサー王にもたらしたのである。

アーサー王と騎士たちもリベアウスが恥をかかずにやり遂げたことを神に感謝し、さらにアーサー王は快くリベアウスと美しいレディとの結婚を承諾したのである。

 

そんな喜ばしい結婚式の話についてはとても表現できるようなものではない。

男爵や領主、貴婦人たちは美しい宮廷で、心地よい接待を受けた。

そして、宮廷やあずまや、また各地を歌いながらさまよう吟遊詩人は素晴らしい題材を受け取ったのである。

フランスの物語によれば、こうしてアーサー王とともに40日を過ごすと、アーサー王と勇敢なる騎士達は馬に乗って出発したという。

それから、長きにわたってリベアウスとレディは幸せに暮らしたのだという。

 

 

救世主キリストよ、聖母マリアよ、我らにもこの騎士のような素晴らしき結末を与えたまえ。

 

2009/9/3

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