13章 ランバート卿との決戦

 

 

リベアウスたちは、可能な限りの進行速度で旅を続けた。

そして3日目、ついにシナドウンの街に到着した。その街には、不思議な技法で建築されている高い城や宮殿などがあった。

 

リベアウスは、街は汚れきっており、街の城壁の中ではなくて外に人が集まって住んでいる様子を見て不思議に思った。

「エレンさん、これはいったいどういうことなんです?

城壁の中でなくて、外に住むなんて不便なものだと思うんだけど。」

 

エレンは答えた。

「騎士さま、それでは説明いたしましょう。

どの騎士だって、ランバード卿が街での滞在を許さないのです。

そのランバード卿とは、執事をしていてまた城の警備隊長(※Constable,コンスタブル。宰相兼軍事の責任者みたいなもの。かなり地位が高い。訳としては正確ではないけれど、だいたい役職は同じ)もしております。

あの門に行って、丁寧に街への入場を頼んで見てください。

そうすると、ランバード卿が試合を申し込んでくるでしょう。

もしランバード卿が勝ったなら、トランペットが鳴らされます。そして、トランペットを聴いて集まった市民達が、負けた相手に泥を投げつけるのです。

そうなったら貴方の人生はそこでおしまい。

どこに行ったて臆病者と蔑まれるでしょうし、貴方の敗北によってアーサー王の名誉だって奪われることになりますわ。」

 

リベアウス卿は答えた。

「凄い侮辱を受けたにも関わらず生きている人もいるよ。

アーサー王の名誉のため、そしてレディを助けるためにボクは戦おう。

ギフレット卿、ボクの試合の準備をしておくれ。手早く、かつ十分にね。」

 

リベアウスたちは5本の槍を準備すると、城門に向った。

そして、勇敢な騎士として話しかけた。

 

これに対し、荷物運び人はリベアウスの主が誰かを質問してきたので、彼はこう答えた。

「ボクの主君はアーサー王。

その主君は敵に対しては恐るべき強さを発揮するけれど、礼儀正しい方。つまりは騎士道の華というべき人だよ。」

 

荷物運び人は警備隊長のもとに向い、このことを伝えた。

「ご主人様、2人の勇敢な円卓の騎士がやってまいりました(ギフレットも数に入れているらしい。)

そのうちの1人は、3匹の金の獅子を描いた、薔薇のような真紅の鎧を身につけていました。」

 

この報告を聞いたランバート卿は、この騎士と戦うことにした。

そこで、ランバート卿は、城門の外の試合場で待っているようにと伝えさせることにした。

伝言を受けた荷物運び人はウサギを追いかける猟犬のような速さで走ると、リベアウスたちに向ってこう告げた。

 

「勇敢なる騎士よ、そなたを妨げるものは何もない。

見たところ、そなたの盾は頑丈で、槍の柄もしっかりとしている。

競技場へ向うがいい。

じきに、ご主人様がそなたと戦うためにやってくるだろう。」

 

リベアウスは豪胆に答えた。

「ようし、そうでなくっちゃ!」

 

そして競技場に入り、くつわを引くと、リベアウスたちは獣のようにうなりながらランバート卿を待った。

 

ep

一方で警備隊長は馬と盾、それから鎧をもってくるように命令していた。

彼の服装は美しいものであり、盾は純金でできており、イノシシの頭が焼き入れられている。さらに、そのふちにはアーミン(シロテンの一種。すごい高級)が使われている。

この精妙な盾は、カーライルのケントが作成したものであった。

さらに、鎧も同じ方式で作られており、美しくまた職人芸の結晶とも言えるものである。

また、槍は太く頑丈に作られており、力強い攻撃を繰り出すことができる。

 

このようにして完全武装した執事のランバート卿は、豹のように身軽な動きで競技場にやってきた。

その競技場ではリベアウスとギフレットが先に待機している。

 

リベアウスは槍を構えてランバート卿に突撃した。

2人は互いの盾に対して強烈な一撃を加えたところ、槍は2本とも粉々に砕け、破片は遠くまで飛び散った。

この光景を見ていた人達は口々に

「あの若い騎士は、なんとも大したものじゃないか。」

と評しあった。

 

これまで一度も叫び声をあげたことがなかったランバートであったが、酷い恥をかかされてしまい叫んだ。

「おい、新しい槍を持って来るがいい!

アーサー王の騎士と言うのは、大した腕前だな。」

 

そう言ってランバード卿も槍を手に取ると、宿敵に向って馬をまっすぐ走らせた。

リベアウスもランバード卿も、まるで手負いの獅子のように激しい戦いぶりを披露した。

 

そして、ランバード卿の一撃により、リベアウスの盾を地面に落してしまった。だが、その衝撃でランバート卿の槍も砕けてしまい、若い騎士は落馬しそうになりつつ鞍の上に立っていた。

一方、リベアウスはランバード卿の兜を殴りつけ、その止め具を破壊した。そのため兜はバラバラになり、喉あては遠くに飛んで言ってしまった。この攻撃で、ランバードは揺りかごの外の子供のように、不安定な感じで鞍に立った。

この光景を見ていた男爵、市民、騎士達は笑いながら拍手をした。

 

ランバード卿は再び騎乗して戦うため、新しい兜と槍を準備させた。

それから、また2人は互いの槍目掛けて強烈な一撃を加えあう。

ランバートの槍が砕け、リベアウス卿は素早く執事の馬に乗り換えていた。

ランバート卿は落馬してしまった。

 

恥じ入る警備隊長に対し、リベアウスは、

「まだやるつもり?」

 

「いいや、降参です。

私はこれまで貴方ほど好感を持った相手はいません。

それに、貴方は明るく勇敢なる騎士、ガウェインの親類に違いない。

もし、私のレディのために戦ってくださるのなら、私は貴方を歓迎いたしましょう。」

 

これを聞いたリベアウスは、

「レディのために戦うのは、アーサー王の騎士としての勤めです。

だけど、ボクはなにも知らないんだ。

どこで、どんな悪い奴が、何の目的で誰がレディを悲しませていているのかっていうことを。

ただ、ボクは彼女の使者として救助を求めやってきた乙女とドワーフに着いてきただけなんだ。」

 

警備隊長は言った。

「分かりました、高貴なる円卓の騎士よ。」

 

やがて、10人の騎士に連れられてエレンがランバード卿の前にやってきた。

エレンとドワーフは、これまでの冒険でリベアウス卿の行ってきた武勇について、すなわち怪物を退治したり、死をもおそれず戦ってきたことを説明した。

ランバード卿はこの話に喜び、神と聖エドワードに対し感謝の気持を述べた。

 

2009/9/2

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