1章 森の少年

序文
我らの救世主・キリストよ、そして聖母マリアよ。
これから物語る知恵と機転に富み、勇敢な戦士にして、果敢な武功を立てた騎士に助けを与えたまえ。

 

ガングラン、という名の騎士がいた。彼の父親こそ、ガウェインである。
ガウェインは森で彼の母親と出会ったものの、母の方は息子に対し、父がアーサー王の円卓の中央に座る騎士だと言うことを告げなかった。

ガングランは見るからに美しい若者に育ち、優雅な体格に光輝くような容貌となった。
だが、母親は息子に対し不運が起きないかと不安に思ったため、息子を外出させず、とても大切に世話をした。
そして、彼女は美しい顔の息子を、「ボー・フィス」(フランス語で、美しい子、の意味)としか呼ばなかった。息子の方も単純なもので、母に対し、自分の本当の名前がなんと言うのか、尋ねることもしなかった。

ある日、たまたま少年は鹿を追いかけて森に入ってきてしまった。
そして、少年は森で綺麗な鎧を着ている騎士の他殺死体が転がっているのを発見したのである。

少年は死体から服と、豪華な鎧を脱がせると、グラストンベリーに向って出発した。当時、アーサー王の宮廷はグラストンベリーにあったからである。

2009/8/11

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