『最後のトーナメント』、解説

 

== はじめに ==
『The Last Tournament』は、『国王牧歌』の中でもかなり最後の方に収録されている物語。
作中、グィネヴィアが養子を取ったり、ルビーを巡ってトーナメントが開催されたりしますが、たぶんテニスンのオリジナル。
少なくとも、『アーサー王の死』には収録されていなかったと思う。
なので、解説と言われましても特にどうとかは…。


== 解説らしきもの ==
一応、この話は1個前の『ペレアスとエタード』と繋がってる感じなので、赤い騎士について少しだけ。
赤い騎士、とかいう悪役は実はペレアスらしいのです。
1個前の話で裏切りに合って絶望し、北に向ってました。
あとマーク王の扱いが非常に悪いですが、これは『国王牧歌』ではよくあること。

とりあえず、特に原作と比べての解説とかできないので、以下は私による感想文というか、見所の紹介ということで勘弁して欲しいのです。


== 感想@〜トリストラム ==
まずはトリストラムについて。
んん、なんかハッキリしない男だな。
ワイルドな感じでして、初期は一人称を「私」にしようと思っていたのですが、とてもイメージに合わず急遽変更。

あと、イゾルトとの会話シーンは辛かった…。
だって、場面展開もなにもなく内面描写が延々と続くんだもの。
ええ、訳すのはすごく難しいです。
意味が一義的に決まるのだと楽なのですが、2通り以上に解釈できるものがあったり、そもそも意味が通らない、っていうか読み取れない文章とかあったり。
とりあえず、8章で「浮気じゃないよ。イゾルトって名前だったから仕方ないよ。」とか変な言い訳を始めたり(8章)のときはダメだコイツ、と思ったのでした。


== 感想A〜赤い騎士 ==
とりあえず、悪役の赤い騎士について。
何のために登場したのか、特に派手な対決とかはなく、飲酒運転は危険だ、というテーマを我々に残して討ち死にしました(6章参照)…。
いや、本当にコヤツ何をしに登場したんだ…。

と、思わせておいて伏線でした。
赤い騎士も、トリストラムも、発言の趣旨は大体共通しているのです。
要するに、「ヤリたいときにヤレばいい。自由とはそういうものだ」、ということ。
あんまり頑張りすぎると良くはない、ってことですね。
賛同できる部分もあるような気がするけれど、それもどうかと。
そもそも、アーサー王が即位したときって、人間って獣みたいなものだったみたいです。
『国王牧歌』訳してると分かるのですが、1つめの牧歌『アーサーの誕生』だと、文脈から明らかに主語は人じゃなきゃならない部分ですら、「beasts」とかになってたりしましたからね。
無法状態をなんとかするため、アーサー王は誓いとかなんとか、人間を縛り付けることで秩序を作ったわけですね。
ただ、それが崩壊すると目も当てられないことになる、と。

だからって、好きにやればいいとかそういうのはどうか?
獣と人間は違う。

そう、『最強伝説黒沢』でも、黒沢が言ってました。
ちょっと引用して見ますと、

「生きてりゃ勝利なんてのは動物の話だ…。
俺は…人間だ…!
人間は動物と違う。決定的に違う…!
生きてりゃいい…。生きてりゃ十分なんて誰が思うかよ…!
理想があるんだよみんなそれぞれ理想の男像、人間像ってのが。
そうゆうものを目指すから人間だ…!」

まぁ、黒沢を例に取りあげるまでもなく、私の傾倒している中国思想、とくに儒教なんてのはテーマに「人間賛歌」って部分があるからね。
私は、どっちかといえば黒沢とか孔子のが正しいと思う。
窮屈でも、辛くとも、人として手放しちゃ行けないものはある。
そんなことを思ったのでした。

2009/9/20


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