4章 アーサー王の帰還
パーシヴァルの話を聞いていたアンブロシウスが質問した。
「それで、アーサー王はどうしたのです?
誓いを立てたのかい?」
「いいや、陛下は誓わなかったよ」と、パーシヴァルは答えた。
「だって、そのとき宮廷にいなかったからね。
というのも、同日の早朝、盗賊の洞窟から抜け出して、怒れる乙女が宮廷に助けを求めにやってんだ。
乙女の、輝く髪は泥で汚れ、乳白色の腕はイバラの刺で赤く染まり、着物は嵐がすぎた後の帆みたいに裂けていたな。
それで、陛下は、けしからんことに王国内の富を吸い上げるミツバチみたいな盗賊どもを退治するために出かけていたんだ。
で、陛下が帰ってきたとき、もうキャメロットの平地は暗くなり始めようとしているころだった。
陛下は驚いた様子で天井を見上げると、“おぅ、屋根に雷が落ちたようだな! 天に祈るのだ、そうすれば雷に打たれることもないだろうから”と仰いました。
しばしば、天下に最も堂々とした食事をともにすることで、宮廷の人間は、みなアーサー王を尊敬していた。
「アンブロシウスの兄弟、我らの宮廷は、かなり昔、アーサー王のためにマーリンによって、建設されたというのを知っているかい?
神聖なるキャメロットの山に、マーリンは薄暗くも豊かな街を、屋根から屋根、塔から塔、尖塔から尖塔、木立、芝生の庭、小川、そして山を昇ったとこに宮廷を建築したんだ。
そして、神秘的な彫刻がたくさんある、4つの偉大な地域が宮廷を囲んでいるんだ。
1番低い場所には、獣たちが人間たちを殺している彫刻が飾られ、2番目の場所では人間たちが獣たちを殺している彫刻があった。
3番目の場所では完全な人間である戦士の彫刻が飾られ、4番目の場所の彫刻では、羽が生えた人間のものだった。
この彫刻はマーリンが作ったものだけど、どの彫刻も冠をかぶったアーサー王をモデルにしていて、特に4番目の羽が生えているものは北極星を指差す構図だった。
東に面した彫刻と、冠をかぶって、羽を生やした彫刻は黄金で作られていた。そして、国民が外にでてくるまで日の出の光を浴び、燃えるように輝くんだ。
しばしば、異教徒の群によって国が荒されるたび、みなはアーサー王の彫刻を見て、“我らにはまだ陛下がついている!”と叫んだりするのだった。
「アンブロシウスの兄弟、おいらたちの宮廷より大きい宮廷は、この大地に存在しないってことを知ってたかい?
12の窓には、アーサー王の戦場での活躍を描き、窓から流れ込む光は床面に12の大きな戦いで、陛下が活躍した様子を映し出す。
えっと、そのうちの1つと、東の端の絵は豊かに、かすかに山と湖を描いているんだ。ここでアーサー王はエクスカリバーを見つけたんだってさ。
で、その隣、1つ西側にある絵は空白なんだ。いつか、誰かが何か書くのかもしれないけどね。
…もしかしたら、おいらたちの戦争が全部終わった後、エクスカリバーを捨て去る様子が書かれるのかもしれないね。
「とかく宮廷は陛下が帰還するまで、マーリンが製作した夢のような作品が、火事で焼失してしまいやしないかと恐怖に包まれたんだ。
陛下が帰ってくると、おいらの方に視線を投げかけてきた。
向こうには、黄金の龍が光を発していたよ。その時点でまだ落雷による火災は鎮火されてなくて、武具はぼろぼろ、みんなの顔もすすで汚れてて、炎はみんなの顔を照らしていた。
そこで、陛下は1番近くにいたおいらに尋ねたんだ。
“パーシヴァルよ、宮廷は誓いを立てる声やらで大騒ぎだが、一体なにがあったのだ?”
2009/7/16