3章 雷とともに登場

「そして、奇跡の年がやってきた。
ところで、兄弟。当時の宮廷には1つ空席があったんだ。
この席は、マーリンが作ったものだったんだけど、奇妙な文字が彫られてた。まるで、蛇みたいにくねくねしてて、誰も読めないんだ。
マーリンが言うには、これは“危険な席”で、善いことも悪い事も起こるって言うんだ。
えっと、“この席に座ったものは、誰であれ命を失う”とか言ってたな。
1度だけ、マーリンは大胆にもその椅子に座ったからか、姿を消してしまったよ。
でも、マーリンの悲運を耳にしたガラハドは、“もし私が命を失ったとしても、私自身が救って見せよう”とか叫んでた。
そういってガラハドがマーリンの席に座ったのは、夏の夜、宮廷で宴会が開かれていた時だったよ。

「こうしてガラハドが“危険な席”に座ったとき、おいらたちは屋根が裂け、ひびが入る音を聞いた、そして屋根の裂け目から雷が鳴り響き、光り輝く様子が目に入ってきたんだ。
雷光は7度にも渡って輝き、昼よりも明るくなった。
そして、雷光のあと、ストールと光に包まれた聖杯が現れ、雲の彼方へ消えてしまった。それから、誰も聖杯の姿を見ることができなくなったんだ。
でも、騎士たちは立ち上がって、黙ったままお互いの顔を見つめあった。どの表情も栄光に満ちていたよ。
やがて、おいらは沈黙を破るように誓いを立てる声をあげたんだ。

「“おいらは皆の前で誓おう。
これまで聖杯を見たことはなかったけれども、1年と1日の間冒険に出かけ、姉さんのように聖杯を目にしてみせる。”
次いでガラハドも誓い、ランスロット卿の従弟であるボールスも誓いを立てた。
ランスロットも誓いを立て、多くの騎士の中、誰よりも大きな声でガウェインも誓いを立てた。」

パーシヴァルの話を聞いていたアンブロシウスが質問した。
「それで、アーサー王はどうしたのです?
誓いを立てたのかい?」

「いいや、陛下は誓わなかったよ」と、パーシヴァルは答えた。

2009/7/16

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