12章 アーサー王のまとめ

「“あぁ王よ、我が主君よ。これまで、ガウェインが冒険に失敗したことはあっただろうか?
そして私が戦場で力を出し惜しんだことがあっただろうか?
だが、君はどうだ、パーシヴァルよ。聖なる修道女と君は騎士達を狂気の沙汰に引き込んだ。
そうだ、最強の騎士は、他のどの騎士よりも狂ってしまった。
私の耳は、青目の猫の耳より聞こえないし、私の目は正午のフクロウの3倍は視力がない。
それでも、聖なる乙女とやらは夢中になっていることが分かる。”

「さらに清廉潔白なアーサー王はこう続けたんだ。
“ガウェインよ、聞く耳を持たず、聖なるモノへの希望しか眼に入らなくなった者は無益な誓いを立ててしまい、結局は聖なるモノを見ると言う願望を見失う。
だが、もしもこれが天のもたらした印だというのなら、聖杯を自分の目で見ると言う祝福はボールス、ランスロット、パーシヴァルに与えられるものだろう。
古代になされた情熱的な予言によれば、また神聖でありながらも狂気に陥った詩人によれば、神が音楽を作られたとき、その音楽は未熟なものだったと言う。
だが、君達は完成した音楽を耳にすることができるだろう。”

「“騎士達よ、私が言ったことは嘘だったかね?
私が聖杯探求の冒険に向う君達にこのことを話したときはとても不吉な予言であっただろう。
君達のほとんどは、沼地でさまよう狐火を探して路頭に迷うと言ったであろう?そして、私の元に帰ってくる事もないようではないか。
そして、私は欠員の出た円卓を見ることになり、帰還ができた騎士は10分の1以下であるため、騎士団は弱体化してしまった。
そして幻を見たために出発した者のうち、最も優れた者は自分が見た物を信じようとしない。
別の者は遥か遠くに聖杯を見たのに、世の不正を正そうとせず出家することしか考えていない。
そして、聖杯をしっかりと見ることができた者は、どこかで王になっているとう話だが、ここにあるその者の椅子は空席になってしまっている。

「“君達の中には、アーサー王だってあの光景を見ていれば、聖杯を見ると言う誓いを立てたに違いない、と考えている者もいるだろう。
だが、聖杯を見ることは困難なものであり、王は法を守り支配せねばならず、与えられた土地を離れることができないと言う点では農民のようなものだ。
割り当てられた仕事を終えるまで、ぶらぶらと出かける事など許されないのだよ。
だが、私の仕事が終わるなら、
我らが歩く大地は大地でなくなり、
目に入ってくる光は光でなくなり、
額に当たる風は風でなくなり、
自分の手足ですら幻になってしまうまで、夜であろうと昼であろうと、幻が訪れることがあってもかまわない。
その瞬間、人は自分が不死のように感じることになり、自分自身が幻ではなく、神や復活を果たしたキリストの存在もまた幻でないことに気づくであろう。
さぁ、立ち上がれ。君達は、自分が見た物をみたのだから”」


「と、アーサー王はこんな風に言っていたよ。
でも、おいらには言っている意味はよくわかんなかったんだ」

the end

2009/8/8

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