8章 マーク王の使者
それから、今度はマーク王の使者が宮廷に入ってきた。
このマーク王はコーンウォールの地を治める邪悪な王である。
使者は両手で運び込んだ輝く宝物は、皆を驚かせる者であった。
それは、まるで太陽とにわか雨によって、淡く金色に輝く大地の草のような金糸織である。
そして使者は金糸織を玉座の前に置くと、ひざまずいた。
使者は、自分の仕える封建的・隷属的な主君に取っているような礼をキャメロットでも実践したのである。
マーク王は、こう考えていたのである。
アーサー王は優美であり、アーサーが自分の甥のトリストラムが騎士になっていること、素晴らしい国を領地にしている事から、マーク王はアーサー王によりこれまで以上の名誉が与えられるであろう、と。
そこで、金糸織を真心の証として受け取ってくれるように使者を送ったのだ。
だが、アーサー王は大声をあげながら金糸織を引き裂くと、ボロ布と化したそれを、オークの木が燃えていた暖炉に投げ込んだ。
「良き騎士よ!
なぜにマーク王の盾が我らの盾の中に混じっているのだ?」
その盾であるが、宮廷の隅には多くの盾が積まれている。
ある盾には模様が描かれていたり、また彫刻されていたりするものがあれば、まっさらに何も描かれていないものもある。
石でできた通常の3倍はあろうかという盾もあり、炉辺から天井に届きそうなほどである。
そして、すべての盾には持ち主である騎士の名前が書かれていた。
これはアーサー王の宮廷の習慣であるのだが、騎士が1つ善行をすれば1つ、2つであれば2つ盾に刻印や装飾がなされるのだ。
だが、もし何も功績をあげないなら、盾はまっさらで、何も装飾がなされないまま、名前だけが明らかになっている。
(ガレスが盾を見てみれば、ガウェインの盾は立派なもので輝いていたが、モードレッドの盾は無地のままであった。)
「騎士に叙任して貰ったことから、マークを王と呼ぶ者がいるようだが、我らのようにマーク王から冠を剥奪すべきと考えている人間の方が多数派だ。
王と言うものは、戦争で闘って領土を得るものである。
そして、気前の良さ、慈悲深さ、勇気、そして真実を話すという美徳により彼らは我らの宮廷に参加することができるのだ。
だが、マーク王は王としての名を汚し、国をも無法者で汚している。
そのうえ、金糸織を送りつけてくるのということは、これを受け取らせて我らを黙らせておくつもりだな。
臆病で、陰謀をめぐらし、道端で待ち伏せをするような卑怯なやり方だ!
だが、悪いのはマーク王で、使者である君に罪はない。
執事のケイを君の監視につけ、ちゃんと送り届けてやろう。誰にも君に危害を加えないように手配しよう。」
それからも、人やけだものからの被害からの救済を求める者が何人もやってきた。
そのたびに、担当を任された騎士が出発して行く。