7章 アーサーの名裁判、その2
1人目の未亡人が出て行くと、さらに別の未亡人が泣きながらやってきた。
「偉大なる陛下!
私は陛下の敵でございます。陛下の手によって、私の夫は殺されました。
ウーゼル王の崩御の後、内戦とき、ロットを初め多くの騎士が陛下と戦い、また陛下は卑しい生まれをしたのだ、と罵っていました。
私もこの騎士達に味方する立場にありまして、陛下に対し訴えることは気が進みません・・・。
ですが、夫の弟は私の息子を城で奴隷の身分に落した上、息子を餓死させてしましたからには仕方ありません。
さらに、陛下が殺した夫が息子のために残した遺産が、夫の弟によって奪われてしまいました。
憎い陛下にこのようなことを頼むのは気が進みませんが、あの盗賊を退治しなければならないので、私と亡き息子の復讐のために騎士を派遣して欲しいのです」
すぐさま、素晴らしい騎士が名乗り出た。
「偉大なる陛下!
私はこの御夫人の親類でございます。不正をただし、その男を成敗する機会を与えてください」
これに対し執事のケイ卿も進み出て、異議を唱えた。
「偉大なる陛下!
この女は陛下を皆の集まる宮廷で罵ったのですぞ。
救援など与える必要はありません。。
こやつには、さるぐつわと枷での拘束を与えてやればいいのです。」
しかし、アーサー王はこのような決断を下した。
「私は王だ。王国内での不正を正す義務がある。御婦人は夫を愛しているのだ。
御婦人よ、貴女が私を愛していても憎んでいてもを貴女を助けましょう。
かつての王は貴女に炎のように過酷な運命を与えました。アウレリウス・エムリスは貴女を苦しめ、ウーゼル王は貴女の舌を切り取った。
しかし、それゆえに王に対する人情を取り戻していただきたい!
御婦人の親類だという騎士よ、出かけるがよい。
罪人を打ち負かしても構わないが、殺してはいけない。宮廷に連れてくるのだ。私が、国王として適切な裁きを与えるのだから。
そして、民のために生き、民のために死ぬ不滅の王が、真実に罪人と認めれば死を与えるのだ。」