6章 アーサーの裁判、その1
元気はつらつと、ガレスは喋り、そして笑いながらキャメロットの街に入った。
宮廷は暗い様子だが荘厳であり、数多くの古代の王達の紋章、功績などが石に刻まれていた。
そして、これら美術品はアーサー王の宮廷に仕える魔法使い、マーリンの手によって、宮廷のどこでも見たり、触れたりすることができるようになっている。
また、アーサー王の命令で、尖っている部分は少ないが、天にそびえるような塔が作られていた。
時折、宮廷の中で騎士達の武器が互いにぶつかり合うことがあったが、その音はガレスの耳には心地よいものであった。
木陰や開き窓からは、乙女達の内気な眼差しがその恋人に対し注がれている。
そして、人民の繁栄はすべて慈悲深い国王の存在によって成立しているのだ。
ガレスが宮廷にやってくると、高い声が聞こえてきた。その声はアーサー王の声であった。
見てみれば、アーチ上の高いホールに、壮麗な玉座。これ以上ないほどに運命から自由でいるように見える。
だが、ガレスの若い心にはその声は衝撃であった。
(この誠実な王は、これから嘘を付くボクを運命付けるのだな…)
ガウェインとモードレッド、その他の者に見つかることを恐れながらガレスは前に進んだ。
だが、宮廷の騎士達の瞳は、清らかな名誉で夜明けの星のように輝く玉座に向けられており、ガレスには向けられなかった。
偉大な王は信頼と、勝利の輝きに愛情を持たれ、常に栄光を与えるのだった。
そのとき、泣きながら未亡人が現れると、王に直訴した。
「偉大なる陛下!
貴方のお父上のウーゼル王は亡き夫から領地を奪い取りました。
夫は事前に黄金を献上しましたが、土地は大事なので差し出さなかったのです。
そのためウーゼル王は奪い取り、私達には黄金も土地もなくなりました」
これに対しアーサー王は、
「ではどうすればよいかな? 黄金を与えるか、どこかに土地を与えればいいのかな」
未亡人は泣きながら、
「いいえ陛下、あの土地こそ夫にとって大切なものだったのです」
「よし、それでは貴女のモノだった土地を再び与えよう。さらに年金として、ウーゼル王が奪った黄金の3倍を与えよう。
こうすれば、昔の状態に戻るだけでお互いに利益を得るということにならないし、正義にかなう。貴女の訴えは聞きいれよう。
王の父によってもたらされた過ちは、王自身によって正されたのだ」
この未亡人が出て行くと、さらに別の未亡人が泣きながらやってきた。