5章 マーリンの忠告
ガレス達が門に向かうと、長いひげの老人が出てきて質問した。
「君達は、何者だ?」
ガレスが答えた。
「ボクたちは農民です。栄光ある王様に土地を貰うためにきました。そして、他の2人はボクの家来です。
街は不思議なことに、霧の中に消えてしまいましたが、もしかして、ここの王様は人の王でなく、妖精の国から来たのではありませんか?
そして、街は王や妃の魔法でできているのではないですか?
それとも、ここに街なんてなくて、幻だったりするのでしょうか?
それに、今流れている音楽はなんだか恐ろしいものです。
どうか、真実を教えてくださいませんか?」
年を取った予言者はこう答えた。
「君よ、私はかつて素晴らしい船を見たことがある。竜骨(船の底にある軸。人間で言えば背骨)は上へ、マストは下を向いている天の船だ。
真実はここにある。だが、私が話す真実は君を喜ばせるものではないだろう。
君の話した妖精の王と王妃が街を作った、というのが真実だということにすればいいのではないかな?
妖精の王たちは聖なる山の裂け目から、日の出とともにやってきたことにしよう。そして、手にしていた竪琴を奏でながら街を作ったと言うことにしよう。
それから、君の言ったように魔法の力を使ったのだろう、だからここには王の影があり、真実に街があるとしても、本当は何もないのだということにしようか。
だから、門をくぐるときには注意するのだよ、でないと妖精王の魔法にかかって奴隷にされてしまうかもしれない。それから、妖精王は君に誓いを立てさせて拘束するのだろうね。この拘束には誰も耐えることはできないのだ。
これはいけないね、男なら虜囚の辱めを受けてはいけないよ。
誓いをさせられて奴隷になるのが嫌なら、門をくぐるべきじゃないね。これまでどおり、牛を飼って生活をすればいい。
もう充分に街から流れる音楽を聞いたろう。街はいまだ建設中で、工事に伴い音楽を演奏しているのだ。だが、街は永遠に完成することはないのだ。」
(Wikipedeia英語版によると、マーリンがガレスに対し、アーサーが誰も守れないような誓いでガレスを縛りつけること、キャメロットが完成しないことを予言している、と解釈するとか何とか)
ガレスはこの答えに腹を立て、
「ふん、予言者よ、貴方の真っ白で、立派なおひげは本物ですかな?
そのひげときたら、貴方の背丈と同じくらいあるじゃないですか!
どうして丁寧に話し掛けた旅人を馬鹿にするようなことを言うのですか?」
予言者は言った。
「君は、"詩人の謎"と言うものを知っているかな?
"混乱(コンフシュージョン)で、幻想(イリュージョン)で、関係(リレーション)で、逃避(イルージョン)で、出来事(オケーション)、それから回避(イベイジョン)って、なーんだ?"
君は私のひげを馬鹿にしたようが、私は君を馬鹿にしたりはしていないよ。
君が考えるように、私は君の正体を知っているのだ。
それと、君がアーサー王をあざけろうとして、ほんの少しの嘘だって許されないだろう」
これまでガレスを馬鹿にしていた老人は、真剣な様子で話を終えると右の方に進み、平野の方に向かって行った。