4章 夢幻都市
ガレス達3人は、農民のような服装に着替えると南に進路を取った。
鳥は木の枝でさえずり、そのメロディーは空に響く。
そして、朝露にぬれた丘は緑に覆われ、生き生きとした緑は花の美しさを引き立てる。
それは、ちょうどイースターのお祭りをすぎたばかりのことであった。
ガレス達がキャメロットの街にたどりついたとき、遥か彼方に銀色の朝霧を見た。
霧は山に、森に、大地にかかっている。
ときおり、高地にある街は輝いており、尖塔と小塔は霧を貫いており、城門一ヶ所だけ開いていた。
と、突然にその美しい街は見えなくなってしまった!
この光景にガレスの従者達は驚いて叫んだ。
「御主人様、これ以上進まないほうがいいですよ。
これは妖精王が作った、魔法の街に違いありません」
2人目の従者も、
「近所で北方の賢者から、こんな話を聞いたことがあります。
その妖精王は王でなく、妖精の国、異教徒の国からやってきた取替えっ子だというのです。
これがマーリンの魔術ですよ。
(向こうの民話。妖精が子供をさらって行く代わりに、醜かったり、愚かな子供を残していく。どうも、Fairylandという言葉を異教徒の住むところ、と同じ意味で使っているっぽい)
さらに1人目の従者が言った。
「御主人様、どこにもさっきの街は見えません、幻だったのですよ」
ガレスは呵々大笑すると、自分に流れる血は王に連なる高貴で、若く、希望にあふれた血であり、年老いたマーリンをアラビアの海に投げ飛ばす霊力があるのだということを説明した。
そう教えると、ガレスは嫌がる従者達を引きずって城門の方に向かった。
しかし、空の下には門らしいものはない。
だが、そこには素足をかなめ石にのせ、水面にさざなみをたてている湖の乙女がいた。
彼女の衣装は側を流れる水で濡れており、美しい腕を組んで天井のしたにいた。
両手からも雫がしたたり、香炉に掛けられている剣は、風と嵐をまとっている。
そして、胸には神聖なるキリストの象徴がつけられており、左右にはかつてアーサー王が戦争で使った武具などが飾られている。
武具は新しいものも、古びれて破損したものもあった。すでに過去のことであるが、この武具を使った者がいたのだ。
そして、上には、アーサーの友人であり、アーサーを助けることになる3人の女王たちがいた。
ガレスから離れた場所を見つめれば、龍と邪悪な紋章が動き始め、渦を巻きはじめた。
女達はガレスに向かい、「貴族様、門は生きてますよ」と叫んだ。
それから、ガレスも同じように目を向けて見れば、それらは本当に動いているようだった。街からは爆音のように音楽が鳴り響いている。
ガレス達が門に向かうと、長いひげの老人が出てきて質問した。
「君達は、何者だ?」