24章 ランスロットとリネット
一方でリネットはランスロットがガレスについて語るのを聞き、さらに機嫌をそこねた。
「ふん、他人に馬鹿にされることよりも、馬鹿のふりをしていることの方がもっと悪いことだわ。
…ところで、ランスロット卿。近くに洞穴があるわ。
そこには肉や飲み物、馬の飼い葉や火打石があるの。
洞穴はスイカズラの花(花言葉は愛の絆)で覆われているから、がんばって探しましょう」
3人は洞穴を探し当て、ガレスはそこで食事をしたあと、眠りに付いた。
眠るガレスを見つめながら乙女は、
「…この寝息から判断して、眠ってしまったようね。元気に目覚めますように!
私は、コイツの母親みたいに優しくないのよ?
でも、一日中子ども扱いされたなら、いらいらして楽しくないでしょうね。
健やかに眠れますように。
ねぇあなた、スイカズラの甘い香につつまれた、静か夜じゃありません?
まるで、世界は平和で、愛と優しさに包まれているかのよう。
…ランスロット卿、ランスロット卿」
と言いながら乙女はランスロットの肩を軽く叩いた。
「私はさんざん罵倒した後、この素晴らしいろくでなしが騎士で高貴な人だと知ることができました、
そして、むこうにも私が罵倒していた、黒い重罪人がいて、きっと戦いを挑んでくるから私を通してはくれないでしょう。
あの強敵と戦うために、貴方はろくでなしより先にたってくれませんか?
そうすれば、先に戦うのは貴方ということになります。
私の騎士、ろくでなし卿は手柄をたてられないけれど、貴方が負けることなんてないでしょう?」
ランスロットは言った。
「貴女の言う敵とやらは、私の、つまりランスロットがどんな盾をもっているか知っているでしょう。
もしガレスがそう望むのなら、彼の盾と私の盾と軍馬を交換してあげましょう。
馬に乗って戦うのが好きなのでなかったら、拍車を貰って騎士になっていないでしょうからね。」
「ランスロット卿みたいにね」と乙女は言った。
「そして、彼はランスロット卿みたいに礼儀正しいのよ」
ガレスは目を覚ますと、しっかりと盾を握り締めた。
「2本の後ろ足で雄々しく立ち上がる獅子の盾、この盾ならどんな槍でも折ってしまうことだろう。
吠えるために口を開ける獅子ときたら!
でも、心配は無用です。この獅子が、私が貴方を信じているのと同じように。
高貴なるランスロット卿、貴方のあふれんばかりの美徳は炎のようです。
ボクはランスロット卿の盾の下にできる影ですら、尊敬してしまいます。
ようし、それでは出発しましょう。」