23章 ガレスの敗北
気配を感じた乙女は言った。
「あ、後ろから誰か来ます!」
最初、彼は負傷したケイをキャメロットに送り届けなければならなかった。
そして、偶然にも乙女が急いだため、彼はガレスたちと森の中で行き違ってしまっていたのである。
…その「彼」とはランスロット卿のことである。そんなランスロットは川を泳いで渡って来ていた。
ランスロットは獅子を描いた青い盾をもっており、静かにと2人の後を追いかけていた。
ランスロットは星が輝くのを見ていたとき、ちょうどガレスは後ろを振り返って、
「待て! 悪しき騎士よ。ボクは友人の仇だ、覚悟しろ!」
と、叫ぶとランスロットに攻撃して来た。
2人の距離が近かったこともあり、次の瞬間、ガレスの槍は不思議な事にうまくあしらわれてしまい、落馬してしまった。
ガレスは、自分が地面に転がっている事に気づくと笑い始めた。
この笑い声は、リネットをいらいらさせた。厳しい声で、
「負かされてしまうなんて、恥を知りなさい!
それに、負けて笑っているなんて、アンタは台所下働きに戻るつもりなの?
アンタが言ってた自慢は嘘だったと言うの?」
「いいえ、高貴な乙女よ。
ボクはまぎれもなくロット王とブリーセントの息子ですとも。
そして、ボクは橋と浅瀬の戦いで勝利したアーサー王の騎士です。
それが、不運にも、さもなくば魔術か策略かによって素性の知らない男に打ち負かされてしまうとは…。
あぁ、ここに折れていない剣さえあれば!」
ランスロットは答えた。
「王子よ、ガレスよ。不運のために遅れはしたが、君を害するために北のではない。
私はランスロット。君を助けに来たのだ。
アーサー王に騎士にしてもらった日と同じくらい、君に会えて嬉しいよ。」
それを聞いてガレスも、
「貴方ですたか、ランスロット卿!
貴方の御手がボクを投げ飛ばしたですか?
偶然は、ボクの慢心を打ち砕きました。その慢心は貴方の仲間たちによって作られたものでした。
いいえ、偶然ではないでしょう。ボクの槍より小さい槍を使った貴方に負けた僕は、大いに恥じるべきでしょう。
あぁ、ランスロット卿だとは!」
一方、乙女は不機嫌に、
「ランスロット卿、私が御呼びした時は来なかったくせに、どうして呼びもしないのに今頃やってきたのです?
私はろくでなしと楽しく旅をしていたのに。
彼は私がどれだけ罵倒してもどんな騎士より礼儀正しく答えてくれた。
でも、もしろくでなしが騎士なのだとしたら、それって私を騙していたってことですよね。
そうやって私を蔑んでいたのね!
アーサー王の宮廷には真実と言うものがないのかしら?
騎士で、ろくでなしで、王子で、大馬鹿。アンタなんて、永遠に嫌ってやるから!」
それからランスロットは言った。
「サー・ガレスに祝福を!
君は陛下の円卓の騎士にふさわしい。
乙女よ、打ち負かされたからといって、彼を罵倒するべきではありません。
私か勝利したのはこれが初めてでなく、数え切れないほど勝ちを得てきました。
弱者から勝利を得たこともありますし、強者から勝利を得たこともあります。
我らは剣と、愛馬とともに私は戦い続けてきました。
だが、君は疲れていたし、君の雄々しい槍は疲れによって威力が落ちていた。
そんなに疲労してしまったのは、川の流れが強かったためと、強敵との連戦のためだ。
それに、罵倒されたときに丁寧に返答したり、打ち負かされたときに明るく振舞うのも難しいことだ。
王子よ、騎士よ、そういうわけだから、君は円卓の騎士に相応しい!」
2009/5/27