22章 私の騎士さま

 

 

「あなたは、最高の台所下働きだわ!」

乙女はそう言うと、このように歌い始めた。

 

「シロツメクサ、雨の降る平野で輝いてる。

雨の後には3色の虹が、甘く輝くの。

愛は3度、私に対して微笑んだ。」

 

「…騎士様、とこれからお呼びしましょう。

でも、私は初めあなたが下働きと言っているのを聞いてしまった。

あなたをそうやって罵り、罵倒したなんて恥ずかしいことだわ。

高貴な身分の私に対し、あなたを派遣するなんて、アーサー王は私を馬鹿にしていると思ったこともあったわ。

でも、今はあなたに許して欲しいの。

あなたは常に礼儀正しく、豪胆でありながら従順でした。

アーサー王の宮廷で最高の人物が誰であっても、ろくでなしが私を一番混乱させるわ。

あなたはなんて不思議な人なんでしょう。」

 

「乙女よ」とガレスは答えた。

「そう言う風に、自分を責める必要はありません。

それよりも、陛下が貴女を馬鹿にしたのだ、と言う不信感をなくして下さり、それから冒険をやり遂げさせて欲しいのです。

貴女は自分の考えを口にしましたが、ボクの答えは行動で示すことにします。

まだ騎士に相応しくない半人前で、まして高貴な御婦人のために戦うなんてできないとしたら、どうしてそんな人間が乙女のわがままを受け入れたりできるでしょうか?

恥ずかしがったり、気にかけることはないのです。

貴女は今、優しい言葉を掛けてくれましたが、昔の厳しい言葉はボクを戦いに駆り立てました。

もう、敵にはランスロットのようにボクを倒せる強さを持った騎士はいないでしょう。」

 

ちょうどそのころ、孤独なアオサギが憂鬱を忘れて足を伸ばし、遠くの水溜りで美味しい夕食の夢を見るように、

レディー・リオノロスはパンと焼肉、赤ワインで食事をとりながら助けを待っていた。

 

やげて、ガレス達にはけわしい谷にたどりついた。

谷には騎士の石版がおいてあり、上の方の彫刻はかすんでいた。

 

「ろくでなし卿、私の騎士様。

むかし、世捨て人がここに住んでいたのです。

隠者の聖なる御手により、戦争中に色々と魂の力で彫刻は作られたのです。

あそこにいる4人の馬鹿兄弟はあちらの湿った壁を舐めることで寓話を形作ったのです。

御存知ですか?」

 

ガレスは岩を見ると読み上げて見た。

軍旗に書かれるような文字は、険しい岩壁に彫りこまれている。

 

文字は、「'PHOSPHORUS'(ギリシア神話で明けの明星)、 'MERIDIES'(不明。だぶん、流れからして太陽とかそんな感じだと思う)、'HESPERUS'(ヘスペリオス、ギリシア神話で明けの明星を司る神)、 'NOX'(ニュクスの別名、夜の女神)、'MORS'(ローマ神話。死を司る神) とある。

 

この5つの単語の下に、顔を前に向けた男が彫刻されており、魂をかなし、壊れた翼で空を飛んでいる。服はボロボロで、髪も整っていない。

これが隠者の住む洞窟に描かれている。

 

「次に、この顔を見て下さい。

…あ、後ろから誰か来ます!」

 

2009/5/27

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