21章 宵の明星

 

 

3倍の大きさの橋の向こう、西側は前面が薔薇色に包まれている。

そして、裸の男がいた。その騎士の下に流れる川は広く、深い。

その男の名前は、イブニング・スターである。

 

これを見たガレスは、

「まだ明るいのに裸でいるなんて、あいつは気が狂っているのですか?」

 

乙女は叫んだ。

「いいえ、裸じゃないわ。あいつの全身は硬質化した皮膚が包んでいるの。

そういうわけだから、あいつが鎧を着ると、鎧は裂けてしまい着られないし、

あいつの皮膚はそれ自体が剣にもなるわ。」

 

三番目の兄弟は、橋の向こうで叫んだ。

「おい、スターの兄弟、あまり輝いていないようじゃな?

病気になったのかの?

見たところ、お前は乙女の連れてきた戦士を打ち負かしたようだな」

 

これに乙女は答えた。

「この人は、貴方の弟のモーニング・スターじゃないわ。

だけど、天がアーサー王の宮廷から、貴方がたに絶望をもたらすために遣わした、ってとこは正しいわね!

貴方の弟達は、この若者に倒されてしまったわよ。

そして、貴方も倒されるのよ、サー・スター?

それとも、貴方は年を取りすぎているかしら?」

 

「あぁ、年は取っているとも。

だが、熟練しており、激しく、力は20代の若者並じゃ。」

 

ガレスは言った。

「確かに口だけは並外れているな!

だけど、モーニング・スターを倒したときと同じくらいの力で、イブニング・スターも打ち負かせるだろう」

 

それを聞いて、男は激しく、死を思わせるような声で言った。

「来い、わしを武装させろ!」

 

古びて、嵐に打たれた赤褐色の天幕から、ゆっくりとした歩みで白髪の女たちが出てきた。

そして、女達は古ぼけた武器と兜を持っている。

兜のてっぺんは新鮮さを失っており、またイブニング・スターの盾の紋章も傷が付いているため、ぼんやりと輝きを放っていた。

 

橋の上で武具は輝きを発し、古ぼけた武具をまとったイブニング・スターは狂ったように突進して来た。

だが、ガレスはイブニング・スターを打ち倒してみせた。

 

イブニング・スターは再び立ち上がったものの、またもガレスに倒されてしまった。

さらに、炎のように立ち上がったイブニング・スターであったが、今度もガレスによって倒されてしまう。

 

このように、イブニング・スターはガレスが疲れて息切れと心拍数を上昇させるまで、幾度も立ち上がり続けた。

しかし、結局のところ嘆かわしいことだがイブニング・スターの皮膚に対する攻撃は無意味だった。

 

やがて、嘆かわしい事にイブニング・スターの熟練の技術はガレスを追い詰め始めた。

「殺されたくなければ、わし達をご主人様、と呼ぶがいい。

お前の攻撃はわしには通用しないのだ!」

 

ガレスが攻撃を続けている間、乙女はずっと叫んでいた。

「すごいわ、、台所下働き、なんてことかしら。

あぁ、ろくでなしの騎士、あなたはどんな騎士より高貴な人よ。

これまでの行動が恥ずかしい。

あなたは円卓の騎士になるに相応しいわ。

相手の技能は熟練しており、皮膚は硬化しているのに。

もう、風向きが変わることはないでしょう」

 

攻撃しながらこれを聞いていたガレスは、自分の鎧を脱ぐと敵の堅い皮膚に対し攻撃を加えたが、それでも刃で傷を負わせられなかった。

ついに、ガレスの剣は折れてしまい、使い物にならなくなってしまった。

 

「まだ、負けたわけじゃない!」

 

ガレスは弾かれたように突進すると、騎士らしくない行動であるが、イブニング・スターの鉄のような腕をねじりあげた。

ガレスの考えによれば、イブニング・スターは鎧のような肌を持っているとしても、絞め殺したり関節技に持ち込めると思ったのである。

 

そうして真っ逆さまに橋に投げつけると、一か八か川に投げ落とした。

それから、ガレスは叫んだ。

 

「ボクを導いて下さい、貴女に付いて行きましょう!」

 

しかし、乙女はこう答えた。

「いいえ、もうあなたを導いたりはしない。私の隣に来てくれませんか?

あなたは、最高の台所下働きだわ!」

2009/5/27

 

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