17章 明けの明星
やがて、ガレス達は円状に城を取り囲んでいる川にたどり着いた。
川はまるで蛇がとぐろを巻いているような感じで、橋を越えなければ目的地に辿り着くことはできない。
土手は広く、坂になっている。川は狭く、流れは速い。
向こう岸に行くための橋は1つだけしかかかっていない。
そして向こう側には絹の天幕が張られており、黄金に輝く男がいる。
水仙が咲いており、天幕は紫色に包まれている。
そして上には真紅の細い旗がたなびいていた。
そして無骨な戦士は非武装でゆっくり歩み寄ると、
「乙女よ、その男がお前を助けるため、アーサー王の宮廷から連れてきた騎士であるか?」
と叫んだ。
乙女は、「いいえ、ちがうわ」と答えた。「サー・モーニング・スター、アーサー王は貴方達をからかうつもりなのか、台所下働きを派遣したのよ。
見なさい、この男は貴方を奇襲したり、非武装の貴方を殺したりしないわ。
こいつは騎士でなくてろくでなしだから」
すると、モーニング・スターは侍女らを呼び寄せた。
「おい、”夜明けの娘”たち、それからモーニング・スターの従者たちよ。
俺に武具をもって来い」
絹のカーテンから素足で、さらに顔を隠していない3人の美しい少女が金色と薔薇色の鎧を持ってやってきた。
少女達の足は露に濡れた草に触れ、輝きを放っている。
そして髪についた露の雫は宝石のようである。
モーニング・スターは青色の武器と、青の盾で武装した。
ガレスはほんの少しの時間、静かに目の前の騎士を見つめると、男の正面に馬を移動させた。
男達の下を流れる水の流れは、空のように流れる青に輝いた。
モーニング・スターのテントと少女の足、男の武器、鎧、そして星も輝いている。
乙女は尋ねた。
「どうしてアンタはそんなに見つめあっているのよ?
恐怖で動けないのかしら? まだ遅くはないわ。
馬に乗ってこの谷を逃げ出しなさい。
誰も非難したりしないわ。だって、アンタは騎士じゃなくて、ろくでなしだもの」
ガレスは答えた。
「乙女よ、騎士であろうとろくでなしだろうと、ボクにとっては貴方の罵倒を聞くことは敵と戦うのことの倍は恐ろしいことですよ。
貴女のために戦おうとする男に対して、もっと美しい言葉が相応しいと思いますよ。
だが、逆にこの不条理はボクにとって幸運だ。
怒りの力を戦いに向ければ、ボクはあいつを打ち負かす事ができるから」
ガレスの話はモーニング・スターを退屈させた。