16章 紳士の邸宅にて
それから森を1リーグほど進むと、豪華で美しい邸宅にたどり着いた。
塔では豪華な食事が提供され、ホールにはたくさんの食材が貯蔵されていた。
そして、ガレス達は高価な珍味を味わうことになった。
紳士は精一杯の見栄を張ったのである。
座席であるが、乙女の前に紳士が座った。彼女の隣にガレスが座ろうとすると、乙女は立ち上がって言う。
「この無礼者め!
ろくでなしは向こうへ行ってよ、私は紳士の隣に座るわ。
ねぇ、聞いてくださいよ。
今朝、私はアーサー王の宮廷で"日と夜の兄弟"を倒すため、ランスロット卿を派遣してくださるようにお願いしました。
この兄弟の最後に陣取る怪物は不敗の騎士で、誰も打ち負かすことができないのです。
そう説明したところで、この身の程もわきまえない台所下働きが、“この冒険はボクに任せてください"とか言い出しましたの。
陛下もどうかしてしまったのか、このろくでなしを派遣することに決めてしまいましたの。
側近の高貴な方たちでなくて、豚を追いまわしてたりするような下賎な者に女性を守らせるなんて!」
そう説明され、紳士は驚き半分、恥じらい半分で2人を眺めた。
乙女は紳士の虚栄心から近くに座っており、ガレスは他の卓に座っていたが、席は紳士の近くであった。
「我が友よ、仮に貴公が台所下働きであろうが、なかろうが、
また、この話が乙女の嘘や怒りにまかせた発言であろうが、なかろうが、
また貴公が王侯貴族であろうが、また狂人であろうが、
詳しいことは尋ねますまい。
貴公が何者であっても、力強い一撃で私の命を助けてくださったことには変わりませんから。
ここにいるのは、強い男であります。貴公が乙女の意思に沿わないことがあったとしても、陛下に対しランスロット卿の派遣依頼をする必要はないでしょう。
貴公はもっと敬意を与えられなければ。
恩人のため、釈明をすることを許していただけますか?」
ガレスは答えた
「御容赦を。
ですが、先に待ち受けるのが”日と夜の騎士”であろうが、“死と地獄”であろうが、ボクは冒険をやりとげます」
そして翌朝、ガレスに助けられた紳士は目的地についていくつかの情報を与え、ガレスの成功をお祈りした。
ガレスは、「ボクを導いてください、貴女に従いましょう!」
だが、乙女は傲慢な風に答えた。
「私はもう進まない。アンタには暇を与えるわ。
アンタに対して少し同情の気持がないわけじゃないけど、さっさと帰りなさいよ。
ここから先、アンタは敵に倒され、死ぬかもしれないわ。
私はもう一度宮廷に行って、陛下に対し、炉の灰の中からでも戦士を派遣してくださるようにお願いすることにするわ。」
ガレスは礼儀正しく返答した。
「なんと言われても、ボクは使命を果たしましょう。
貴女に付いて行くことをお許しください、
そしてボクの運命を信じてください。ボクの運命は、陛下の息子にも匹敵するものです」