11章 リネット登場
それと同じ日、1人の身分の高い乙女が宮廷にやってきた。
顔はサンザシの花のよう、頬はリンゴの花、そして鷹の目(※)をしていた。
また、鼻は少し細くて花びらのよう。
そんな乙女は従者を連れて宮廷にやってくると、大声で叫んだ。
(※ とりあえず直訳。鷹は貴族の象徴なので、意訳すれば貴族的な目かも。たんに性格がキツイのを表しているのかもしれない)
「陛下は、敵を残らず打ち負かしたようですが、領土内に敵が残っておりました!
橋、浅瀬は城を持つ盗賊どもによって攻撃されています。
なのに、どうして陛下はここにいらっしゃるのです?
私は王の立場にありません。ですが、もし私が王であれば、民を無残な流血沙汰から守ると思います。
陛下の祭壇は罪と言うなの血であふれそうになっていますよ!」
「まぁ、落ち着きなさい」とアーサー王は言った。
「私は君ではないが、我らの誓った騎士道精神に鑑みて、荒廃してしまった王国を立て直す義務がある。
宮廷までやって来た乙女よ、君の名前は何だね? そして何を必要とするのだい?」
乙女は答えた。
「私の名前ですって? リネットと申します。
そして、私が必要とするものは、私の姉、リオノロスのために闘ってくださる高貴な騎士でございます。
姉は高貴な家柄の出身で、美しい手をしており、もちろん私よりも美しい女性です。
姉は今、パーリオス城にいます。そこは3つの河が周囲を囲んでおり、そこに至るためには3つの道があり、3人の騎士がそれぞれ道を守っているのです。
さらに、3人の騎士の兄弟である4人目は、兄弟の中でもっとも強く、城の中で姉を意思を無視して監禁しています。そして、その騎士は姉と無理に結婚しようとしているのです。
ですが、陛下が闘うために騎士を派遣してくだされば、奴の目的を妨害することができるでしょう。
第1の騎士、ランスロットならばきっとやり遂げられるでしょう。
そして、栄光と伴侶を得ることになるでしょう。ですが、姉自身は助かったとしても、愛する人と結婚するか、さもなくば神に仕えるかで、救援の騎士とは結婚しません。
そういうわけで、私はランスロットを派遣して貰いに来たのです。」
これを聞き、アーサー王はガレスの依頼を思い出すと、
「乙女よ、知っての通り騎士団は王国内の全ての悪を打ち破るために存在している。
だが、その4人はどうなのだろう? どんな流儀にしたがって行動しているのか?」
「流儀と言うなら、奴等は馬鹿者の流儀ですわ。
昔の騎士が武者修行でもするような流儀で、馬に乗って外国へ行き修行するのです。
時によって礼儀正しかったり、残忍だったり。彼らには法律も、君主もあったものではないのです。
それから、彼らは一日にちなんだ、ファンタジー入ってる中二病的な名を名乗っております。
すなわち、1人目は「モーニング・スター」(明けの明星)、2人目は「ヌーン・ディ」(正午の太陽)、3人目は「イブニング・スター」(宵の明星)で、頭は悪いですがかなり強いのです。
そして、4人目の騎士は他の奴より少し賢く、常に黒い鎧を着ており、巨漢で性格は果てしなく凶暴。
その4人目は「ナイト」(夜)とか「デス」(死)とか呼ばれています。
しかも、頭蓋骨で覆われた兜をかぶり、腕には骸骨を模った甲手を身に付けています。
仮に前座の3人を殺すなり、撃退することができたとしても、4人目に殺されて、目覚めのない夜を味わうことになるでしょう。
この4人はそろいもそろって馬鹿な奴ですが、腕は確かです。そこで、私はランスロット卿を派遣していただくため参りました。」
これを聞いたガレスは、名乗りをあげて立ち上がると、燃える瞳を向けて、
「偉大なる陛下! この冒険をボクに任せていただきたい!」
これには、ガレスの近くにいたケイはまるで牛のようにうなり声をあげた。
「陛下も知っての通り、ボクは貴方の台所下働きです。
そして陛下はボクに肉や飲み物を下さいました。
そんな奴ら、100人だって倒して見せると約束いたします」
アーサー王はちらりとガレスに視線を移すと、ちょっとうつむいてから、
「大胆なことだね。だが許可しよう。
君は騎士に叙任する価値のある男だ、行きたまえ」
これには、宮廷の人々は驚いた。